自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

ロケットマン

まず、「ロケットマン」上映館で「偏見のためにHIV/エイズの検査が進みません」ってCMを流すのって、それこそ、同性愛者に対する差別や偏見なのでは?と思った。

それはさておき、楽曲の邦題表記は「ロケット・マン」なのに、映画の邦題には中黒がないって時点で、配給会社側がそんなに本作に期待していないんだなってのが分かるよな…。

まぁ、クイーンと違って、洋楽をあまり知らない人でも知っているエルトンの曲って、「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」くらしかないもんな…。タイトルが「ロケットマン」ではく、「ユア・ソング」だったら、「ボヘミアン・ラプソディ」級とまでは行かなくても、「アリー/スター誕生」くらいのヒットにはなったのではという気もする…。

「キャンドル・イン・ザ・ウインド」は封印しちゃったから、ダイアナ妃の死とエルトンの追悼盤シングル「キャンドル・イン・ザ・ウインド1997」のリリースがセットであることを知らないリアルタイムでない世代にはアピールしないしな…。
日本だと年上のきょうだいとか音楽マニアの親とかいなければ洋楽好きになるのはそれこそ、中二病ではないが、中2の頃が多いから、「キャンドル」を知っているのは30代半ば以上になるしな。
「可愛いダンサー」が効果的に使われた「あの頃ペニー・レインと」は日本では小規模公開だから、映画マニア・音楽マニア以外には認知されていないし…。
ライオン・キング」の曲はオリジナルのアニメーション版ではエルトン自身が歌う「愛を感じて」は、エンド・クレジットに流れるだけだから、エンド・クレジットを見ない一般人は知らない可能性が高いし…。そもそも、日本では「ライキン」の曲は「愛を感じて」より、「サークル・オブ・ライフ」や「ハクナ・マタタ」の方が人気があるからな…。というか、この2曲は映画ではエルトンの歌唱バージョンは使用されていないからな…。というか、「ハクナ」はサントラ盤にもエルトン歌唱版は収録されていないし…。「サークル」は収録されていたが…。
あとは、せいぜい、本作でも終盤に使われた「アイム・スティル・スタンディング」がイルミネーション作品「SING」で知られているくらいだが、字幕版にしろ吹替版にしろ、エルトンの歌唱は使用されていないからな…。

あと、本作に物足りなさを感じるとすれば、エルトンがアルコール中毒を克服した80年代初頭までの話としている設定上、仕方ないのだが、ミュージカル・ナンバーもしくは、挿入歌として登場する楽曲に80年代以降の作品がほとんど登場しないんだよね。
80年代以降の楽曲は、80年代:1曲、90年代:0、00年代:1曲、10年代:本作のエンド・クレジットに流れるエルトンと主演俳優タロン・エガ-トンのコラボによる新曲のみって状況だからな…。

ボヘミアン・ラプソディ」は1985年のLIVE AIDがクライマックスで、その後、フレディの死までに出たオリジナル・アルバムは3枚しかないし、しかも、そのうちの1枚は「ハイランダー」のサントラを兼ねつつ、他の映画の主題歌などを追加した企画盤みたいなものだし、生前にリリースされた最後のオリジナル・アルバム収録曲で他界した時点ではUKでの最新シングルだった「ショウ・マスト・ゴー・オン」はエンド・クレジットに流れるからな…。あの映画はキャリアのほぼ全期間を網羅しているんだよな…。

それと比べると、音楽的に物足りないのは事実かな。
何しろ、エルトンは1970年から99年まで全米トップ40入り連続年数30年という大記録を持っているからな…。それまでの記録はエルヴィスだったが、本作ではエルトンが、エルヴィスに影響を受けたと思われるシーンが入っていて、エモいなと思った。

まぁ、エルトンの記録って、結構、だましだましで達成された部分も大きいけれどね。
1986年秋リリースのオリジナル・アルバムが振るわなったことから、翌1987年のトップ40ヒットはジェニファー・ラッシュのアルバムからカットされたコラボ曲「フレイムス・オブ・パラダイス」とライブ・バージョンの「キャンドル・オブ・ザ・ウインド」だし、1991年はエルトンがゲスト参加したライブ録音によるジョージ・マイケルによるエルトン曲のカバー「DON’T LET THE SUN GO DOWN ON ME」のおかげ。しかも、年末ぎりぎりのトップ40入りだったし…。
1993 年秋リリースの企画盤「デュエット・ソングス」からもトッ40ヒットは生まれなかったが、前年リリースのオリジナル・アルバム「ザ・ワン」からのシングル・カット曲が1993 年にもヒットし、翌1994 年は「ライオン・キング」のサントラがあったから延命できたわけだし。
1996年は前年にヒットした「Blessed」が再度トップ40入りしたおかげだし。1997年は最新オリジナル・アルバムからのシングル「ユー・ルック・トゥナイト」との両A面とはいえ、ダイアナ妃追悼でリメイクした「キャンドル・イン・ザ・ウインド」のおかげだし。翌年は引き続きチャートインしたこの両A面シングルが唯一のトップ40ヒットだからな…。
まぁ、でも良い曲が多いのは事実だけれどね。

本編の感想としては、エルトンがロケットになるシーンがあって笑えた。本当に「ロケットマン」になっちゃったよ…って感じで。それから、「僕の歌は君の歌」誕生のシーンは泣けた。あと、時系列的に「おかしいよね?」ってのがあるのは、「ボヘミアン・ラプソディ」と同じだな。
とりあえず、年末まで忘れられなければという感じではあるが、タロン・エガ-トンの主演男優賞と衣装賞はノミネートされそうだなと思った。

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