自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

失くした体

身体機能の喪失=身近な人間の喪失や人間性の喪失のメタファーみたいな感じの典型的なパターンではあるし、ちょっと不気味な設定ではあるが、何か切ないし、ジーンとくるところもあるし、前向きにも取れる終わり方も良かった。原作のタイトルが「HAPPY HAND」なのは、そういうことなのかな。

普通に考えれば、アカデミー長編アニメーション賞にノミネートされるであろう作品かなと思った。

日本製アニメ映画でアカデミー長編アニメーション賞にノミネートされた作品がジブリを除くと「未来のミライ」しかない理由というのがこれを見るとよく分かる。

日本のアニメファンにはいまだにCGアレルギーの人間が多いから、そういう層に向けて作られた作品は、最新技術の面では劣る・古臭いと海外の一般映画ファンには思われると思う。それから、オタクに媚びた内容のものや、非アニオタに向けたキラキラ系青春映画のアニメ版みたいな作品、テレビアニメの劇場版が多いから、社会性・政治性は薄い。それじゃ、ノミネートは難しいよね。クール・ジャパンなんてウソっぱちだというのがよく分かる。

今年度のアカデミー賞に向けて長編アニメーション賞にエントリーされている(ノミネート資格を得た)日本作品でいえば、アート面、社会性の両方から見てもノミネートの可能性があるのって「海獣の子供」くらいかな。「天気の子」は微妙。「プロメア」のCGは海外作品から見たら劣ると言わざるを得ないし。まぁ、「若おかみは小学生!」が劣悪な環境で働くことになった児童の問題を描いた作品と勘違いしてくれれば、ノミネートの可能性もないとはいえないが…。

ネトフリ映画(本作は厳密には違うかもしれないが)が配信を前に劇場公開されるようになったのは良いことなのだが、ほとんどが配信1週間前からの限定公開で、上映も1日1回みたいのが多いのが難点だよな…。しかも、ミニシアターとかイオンとか、アクセスが容易でないところでの上映が中心だからな…。

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