自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

キャッツ

米国で大酷評され大コケしたと話題になり、日本でもその情報がネットニュースで伝えられた(配給会社や宣伝会社に忖度するキー局では伝えられないが)ミュージカル映画「キャッツ」を鑑賞した。

 

メガホンをとったトム・フーパー監督は「英国王のスピーチ」、「リリーのすべて」といった賞レースを賑わせた作品でおなじみだし、同じくミュージカル映画である「レ・ミゼラブル」はアカデミー作品賞にもノミネートされている。

 

本作に関わっているスティーヴン・スピルバーグ監督は数々の名作を世に送り出し、彼が監督もしくはプロデューサーを務めた作品のうち、実に12作品がアカデミー作品賞にノミネートされている。

 

同じアンドリュー・ロイド=ウェバー作品の映画化でいえば、「エビータ」はゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門の作品賞を受賞しているし、「オペラ座の怪人」は賞レースとは縁遠いジョエル・シュマッカー監督作品であるにもかかわらず、同賞にノミネートされている。

 

キャスト陣も豪華だ。ジュディ・デンチイアン・マッケランといったベテラン名優、テイラー・スウィフトジェイソン・デルーロといった人気アーティスト、歌でも演技でも評価されているジェニファー・ハドソンミュージカル映画ピッチ・パーフェクト」シリーズで知られるレベル・ウィルソン、車の中で人気アーティストとカラオケするバラエティ番組で有名なジェームズ・コーデン等々、演技面でも音楽面でも文句のつけようがない面々が集まっている。

 

予告を見た時には多少、違和感のあったCG処理されたキャラクターたちも見ているうちに慣れてくるので、そんなに変ではない。

 

勿論、音楽は元々のミュージカル・ナンバー、特に「メモリー」は名曲だし、映画用に付け加えられたテイラー・スウィフト作の新曲も良い曲だ。「アラジン」や「ライオン・キング」の実写版に付け加えられた新曲はぶっちゃけ蛇足だと思うが、この曲はきちんと、ストーリーに溶け込んでいるのに、アカデミー歌曲賞にノミネートされないどころか、ノミネート対象曲にすら選ばれなかったのは意地でも、この映画を評価しないという悪意を感じる。

 

で、見た感想だが、アカデミー作品賞にノミネートされるような作品とは到底思えないが、大酷評されるような内容ではないといった感じかな。

少なくとも歌曲賞くらいはノミネートされてもいいんじゃないのとは思う。

 

個人的には米国でこの映画版が酷評され、大コケしたのって、黒人(正確には黒人俳優が演じる黒猫)が悪役だからだとしか思えない。結局、それが気に食わないんでしょ?って感じかな…。

 

トランプ政権支持層と近いプア・ホワイトが主人公だからという理由で、反国家権力な作品であるにもかかわらず、米映画賞レースで「リチャード・ジュエル」が無視され、「ジョーカー」もとりあえずノミネートはされるものの、作品賞はもらえないってのと一緒。本当、トランプ当選以降の米国のエンタメ界はまともに作品の良し悪しで評価されることがなく、腹が立ってくる。

 

ところで、この内容はあまりないけれど、歌と踊りで何となく見てしまう大長編MVのような映画って、どこかで見たなと思ったが、アレだな!マイケルの「ムーンウォーカー」だ!夜の雰囲気といい、猫といい、共通点も多いし。あと、舞台版が発表された時期を考えれば当然なのだか、この作品のミュージカル・ナンバーって80年代っぽい音だよな…。

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