自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

ハスラーズ

ラジー賞に好かれる?ような映画ばかり出ていて、最近は興行的にも振るわない作品も多く、日本でもまともに公開されない。そんなイメージがあったJ.ローが賞レースに参戦する作品に出演。

さらに、出番は少ないが、カーディ・Bやリゾといった今、人気のアーティストも出演しているし、ストリップ・クラブが舞台ということで、色んな時代のヒット曲や名曲が流れる(ショパンまで!)とくれば、洋楽好きなら注目せずにはいられない作品だ。

さらに、リーマン・ショックにまつわる実話にインスパイアされた作品だし、海外ニュース好きの人間としても見逃せない。

そんなわけで、見ることにしたが、確かにこの作品がアカデミー賞に完全無視されたのは納得いかないな。メインの2人がアジア系とヒスパニックだからかな?

監督賞にアジア人がノミネートされ(受賞も果たした!)、主演男優賞にはヒスパニックがノミネートされていたのに、今回のアカデミー賞のノミネートが発表された時点でリベラル的な連中は「白いオスカー」とか文句を言っていたからな。連中の言う人種差別のない世界ってのは、対黒人に対してのみで、アジア人やヒスパニックの人権は気にしていないってのがバレバレだよな。そもそも、差別されていると不平不満を言う米国の黒人って、アジア系やヒスパニックを見下しているというか、明らかに差別しているしね。

まぁ、百合的描写があったが、それをはっきりとレズビアンとして描けば、リベラル層の連中も評価したのかもなという気はするかな。

 

とりあえず、J.ローの演技は確かに、ダンサーや歌手としての経験があるからこそできる見事なものだったという風に感じた。

主演のコンスタンス・ウーに関しては、いかにも、米国人好みのアジア人メイクって感じなのが気にはなったかな…。

ところで、ストリップ・クラブが舞台で、端役の人は乳首を見せたりしているが、メインの2人は脱がないんだな…。そういうのって、米国映画でも日本映画でもあるが、どうなんだろう…とは思った。リゾは乳首を隠してはいるものの、ほぼ乳房露出状態だし、カーディ・Bはバイブを持ち歩いていたから、同じアーティストでもJ.ローは別格なのか?アーティストではないが、コンスタンスは後姿の上半身ヌードはあったか…。

それにしても、音楽センスの良い映画だ。音楽の使い方の上手い映画は作品自体も良くできているという持論にあてはまる作品だった。

スティーヴィー・ワンダーが目が見えないのにストリップを見に来たってネタ、最高だったが、自分以外誰も笑っていなかったな…。(このスティーヴィーが実は目が見えるってネタ、色んなところで使われているよな…)本当、日本って、映画製作者も映画ファンも映画以外の知識に乏しいのが多いよな…。

それから、アッシャーが本人役でカメオ出演しているが、その際にかかるのが「LOVE IN THIS CLUB」というベタベタな選曲なのも良い!裏で性的サービスも行っているストリップ・クラブにはピッタリな曲だよね…。

ベタといえば、フランキー・ヴァリと遭遇した祖母のエピソードに合わせて、フォー・シーズンズの曲を使うのも良かった。

フィオナ・アップルの「クリミナル」を使うのもベタな選曲かな。好きだけれど、そのセンス。

あと、ジャネットに対するこだわりも感じた。冒頭で「コントロール」を使うのみならず、本編途中とエンド・クレジットでは「ミス・ユー・マッチ」も流れるが、そのエンド・クレジットで流れる際には、ストリップ・クラブのMC音声とミックスして使われている。そのMCでは、ポロリ云々という言葉も出てくる。

スーパーボウルのハーフタイム・ショーのポロリ騒動以降、叩かれまくり、ラジオやテレビで避けられ、人気が下降してしまったことに対する憤りというのを感じるな。ジャネットを再評価しろ!というメッセージだと受け取ることができた。

 

それにしても、女優としてのJ.ローのキャリアって波乱万丈だな。

初期のダンサーとして来日したこともある無名時代から始まり、「マネー・トレイン」や「アナコンダ」など批評家には絶賛されないが、そこそこの好成績をあげる映画で知名度を徐々にあげていき、「セレナ」で注目度を増す。まぁ、全米アルバム・チャートで1位を取ったこともあるアーティストの伝記映画なのに、日本では知名度が低いということで劇場未公開に終わり、しかも、洋楽ファンにはセレーナ表記でおなじみなのに邦題は「セレナ」になったんだから、本当、日本の映画関係者って映画以外の知識に乏しいよなとは思った。

そして、その後、「アウト・オブ・サイト」で魅力たっぷりな役を演じ、女優として認知されたって感じかな。この作品は低迷状態にあったスティーブン・ソダーバーグ監督の復活作品にもなったし、単なるイケメン扱いだったジョージ・クルーニーの演技力が評価されるきっかけにもなった作品だった。

それから、歌手として成功したのに合わせて、「ウェディング・プランナー」、「ザ・セル」、「メイド・イン・マンハッタン」といったヒット作にも主演するようになる。(日本では歌手としては人気になったが、主演映画はヒットしなかった…)

でも、ベン・アフレックと結婚してから運気は低迷し、ラジー賞にも好かれるようになり、興行的・批評的にも失敗作といえる作品ばかりに出るようになってしまう。

さらに、歌手としてもかつての勢いを失い、結婚・離婚などの恋愛スキャンダルを繰り返す、単なるお騒がせセレブになりつつあったが、A・ロッドとの婚約発表あたりから再び浮上。ついに、「ハスラーズ」で賞レースを賑わせ、歌手としても、スーパーボウルのハーフタイム・ショーに出演。本当、波乱万丈なキャリアだな。

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