自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

信州発地域ドラマ「ピンぼけの家族」

正直な感想を言うと、一番ピンぼけなのは、この作品のテーマや構成だと思う。地域振興策の一環として作られたものに多いダメな作品の典型という感じかな。

単なるロケ地として提供し、地元に金が入りさえすれば、別の土地の設定にされても、悪の巣窟のような場所として描かれても構わないみたいな地域振興であれば別だが、本作は明らかに諏訪という町とその町の歴史をアピールするという目的に作られているから、結局、地元の人の「アレもやれ!コレもやれ!」だらけになってしまったのではないかと思う。

 主人公と祖母のエピソードに集中して描けば、結構感動的な話になったと思うんだけれど、カメラ産業が衰退した町・諏訪の歴史なんてものを絡めることが義務付けられてしまったせいで、色んな登場人物が出てきてしまい、話がとっちらかってしまっている。

全然、自分の祖母とは性格も体格も違うけれど、おばあちゃんっ子だったから、この手の老人と孫ものには弱いので、本当、この主人公と祖母の関係に絞って描いて欲しかった。というか、主人公の祖母の昔の写真探しも何か中途半端だったな…。

 

また、途中で突然、ドラマではなく、ドキュメンタリーになってしまい、主人公が町の素人に取材する構成になってしまうのも謎の演出だ。それがやりたいなら、ドキュメンタリー・バラエティのような番組にし、その中で印象的なエピソードを再現ドラマとして挿入した方が良かったのでは?地元の名士みたいな人を記念にテレビに出させてあげてよみたいな感じで、ああいう構成になったと思われても仕方ないと思う。演技パートと取材パートでは話し方も違うし、撮影方法も違うから、何かしっくりこないんだよね。

 

そして、南沙良のキャラクターも不要な気がする。まぁ、自分は彼女目当てで見たんだけれど…。さびれた町を出て行く若者代表なのかもしれないが、唐突に主人公の祖母の写真探しに同行しだすし、ご都合主義の塊のようなキャラクターだった。

それに、これだけ可愛い娘が自分に好意的になっているのに、恋愛感情も性的欲望も抱かないのは不自然だろ!相手は南沙良だぞ!本当、可愛い!

 

それにしても、柄本明が病床にふす父親を見舞う息子の役を演じるとは…。

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