自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

Fukushima 50

泣けるけれどクソ映画というのが正直な感想かな。

 

佐藤浩市とケン・ワタナベが出演。配給は松竹(共同だが)。しかも実話ベースと聞けば、誰もが権力批判の左寄りの映画かなと思うのに、政治的バランスが取れているという感想が出てきたり、「右でも左でもない」と自称する人たちが絶賛したりする理由がよく分かった。

 

余談になるが、「右でも左でもない。政治批判をしたくない」っていう人は大抵、ネトウヨか、ネトウヨではないが安倍政権支持者だよね。彼等の言う政治批判ってのは安倍批判のことなんだよね。野党とか、海外の政治家の批判は平気でしているもんね。

ちなみに、自分みたいな「右翼でも左翼でもある」と言う人間はネトウヨからもパヨクからも批判される…。「安倍政権は支持できないが、改憲は必要だ。ただし、安倍政権でない時に」って言うと、ネトウヨからは安倍不支持の部分だけで「反日パヨク」って言われるし、パヨクからは改憲容認の部分で「ネトウヨ」って言われるのは、「は?」って感じ。

 

本当、最近の日本って政治に限らず、アイドルにしろ、バンドにしろ、漫画家にしろ、スポーツ選手にしろ、何でもいいが、何かのファン・支持者だったら、その人の言動を一切批判してはいけない。しかも、その人だけではなく、その人の所属する団体や、その団体の他のメンバーも批判してはいけないって風潮が強いからね…。だから、1つでも批判すると対抗勢力になってしまうんだよね…。

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 話は戻るが、この映画って実話を基にしたとか言いながら実は違うんだよね。というか中途半端。「えっ?これで終わり?」って感じで唐突に後日談になってしまうのは実話をベースにしているからってのを口実にした逃げでしかないって感じかな。

そして、そういう実話ベースを売りにしていながら、実名で出てこない人物・団体が多いのも問題だと思う。

現場に口出す総理大臣は出てくるが、名前は菅直人でない。それどころか名前も出てこない。でも、誰もが、あの時の総理大臣は菅直人と知っているので、悪役的立ち位置で、なおかつ、在日米大使館から無能扱いされている総理大臣が出てくればてネトウヨ思想の人は喜ぶ。

でも、見方によっては、たまたま、この公開時期と重なっただけとはいえ、最近の新型コロナウイルス対策で無能ぶりを発揮し、なおかつ、典型的なものを知らない奴が無茶ぶりしたみたいなことをやっている安倍晋三にも見えてくるから、菅直人を極悪人にされた旧民主の支持者の不満も多少は解消される。総理大臣の固有名詞を出さないのは、当時の政権も今の政権も批判対象だよというアピールなのかな?

 

また、東電という略称の企業は出てくるが、この映画に出てくる電力会社は東京電力(TEPCO)ではないんだよね…。皆、あの東電の話だと思い込んで見ているけれど、違うんだよね。まがいものみたいな名前の電力会社の話に変えられているんだよね…。

だから、原発容認の自民支持者も架空の話として無視することができるし、マスコミも東京電力に忖度して、この作品の存在を無視しなくても済む。それでいて、悪役として、まがいものとはいえ東電本店が登場するから、左よりの人たちも満足できる。

まぁ、そういう配慮をしているのに、吉田所長と福島第一原発という固有名詞は実名で出てくるのは謎だけれどね…。

そういう謎の設定改変が政治的中立に見える理由なのかな?でも、そういう改変によって、凡庸な映画になってしまった感はするかな。まぁ、邦画にしては安っぽい画にはなっていなかったが。

 

そして、菅直人のまがいものや東電のまがいものを悪役とする一方で、自衛隊や米軍は救世主のような存在として描いているんだよね。(いずれも撮影に協力している)

本当、嫌らしい映画だよね…。

 

それから、実話をベースにしていながらリアリティがない最大の要因は、大震災や原発事故を伝えるニュース映像にリアリティがないことかな。CNNやCCTVが実名ではなく、まがいものみたいな名前で出てくるから、全然リアリティがないんだよね。洋画なら報道機関は実名で出てくるのにね。これが日本映画のダメなところかな。しかも、海外の報道機関だけではなく、日本の報道機関の描写もダメダメ!日本のテレビでニュースが流れるシーンでアナウンサーが「本日」と言っているんだよね。アナウンサーは「本日」なんて言葉をストレートなニュースでは使わないからね。そんなことも知らない人間が社会派気取りの映画を作ったってリアリティが出るわけがない!

 

あと、大震災の時期って、日本の地上波が完全地デジ化する前だから、避難所に置いてあるテレビが地デジ対応ってのは違和感があるな。急遽、設置された避難所に置かれたテレビなんだからブラウン管テレビもしくは、ブラウン管テレビで地デジも見られるようにしたものの方が自然な気がするな。

そして、大震災とテレビといえば、その発生する数時間前にビックカメラ有楽町店に行ったことを思い出す。そこで店員が一般人は地デジのことなんて知らないと思い、ウソを言いまくって契約させようとしたのは許せなかったな。「今すぐアンテナ工事をしないと地デジは見られません」とかほざいたんだよな。ケーブルに入っているから、それ経由で配線すれば地デジを見たり録画したりできるのは明らかなのに、こいつは「アンテナを設置しないと見られない」って抜かすから「ウソつくな!」って怒鳴って帰ったんだよな…。「こっちは映像関連の仕事してんだぞ!素人と違って、そんな詐欺行為は通じないぞ!」って感じかな…。まさか、その数時間後に、あんなことが起こるとは思わなかったが…。

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 《おまけ:この映画を見て思ったどうでもいいこと》

 ★原発で働く人たちが押し寄せる津波を見て、「津波だ!」って言うの、あれ、特撮映画で市民が海獣を見た時の反応だろ!

★なんで、数年後に佐藤浩市が桜咲く現地を訪れるシーンに流れる曲が「ダニー・ボーイ」なんだ?あの場面で使うなら、「花は咲く」とかでいいだろ!

★この映画の公開を延期しない理由がよく分かった。エンド・クレジット前に「2020年に復興五輪として東京五輪パラリンピックが開催され、福島から聖火リレーが行われる」って文言が出るんだもんな…。

★総理大臣、本店、所長、当直長、どいつもこいつも根性論・精神論のパワハラ親父だった。この50って、50過ぎのオッサンはどいつもこいつもパワハラ野郎って意味なのかな?

★Fukushima 50といえば脳内でFSM50に変換されるが、大震災が発生した2011年が

AKB48のピークだよなと思う。「エビカツ」や「フラゲ」もこの年だし、この年は精力的にチャリティ活動をしていたしね。最近はチャリティ活動を精力的にやるほど余裕ないんだろうな…。まぁ、今年はコロナがあるから難しいってのもあるのだろうが…。