自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

「ポニーテールとシュシュ」10周年

ポニシュ新規という言葉がある。それだけ、「ポニーテールとシュシュ」をきっかけにAKB48に興味を持った人が多いということだと思う。そんな、「ポニシュ」のリリースから5月26日で10周年となるとは感慨深いものがある。

ただ、正直なところ、AKBグループは長いこと下降モードに入っている。しかも、NGTの問題で一気に印象は悪くなっている。そこへ来て、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、AKBのような専用劇場で行われる観客との距離が近い公演や、握手会やチェキ会などの接触系イベントを売りにしているグループは今までのような活動は難しくなっている。そんな中、AKBのファン層拡大の起因となった1曲を振り返ることに意味はあるのだろうかという思いもある。

でも、「AKBで一番好きな曲は?」と聞かれたら間違いなく、コレと答えるほど好きな曲なので、ここは、この10年、秋元系アイドルの世界に限らず、世界情勢も、日本も、というか自分にも色んなことがあったよなという思いをめぐらせながらも、この名曲を振り返ることを許していただきたいと思う。

 

自分は「ポニシュ」という曲が気に入り、AKBというグループ自体にも興味を持ち、以降リリースされるシングルを毎回買うようになった。そういう意味ではポニシュ新規なのかもしれないが、実は初めて買ったAKBのCDはこの曲ではないんだよな…。

「ポニシュ」の約3年前に出た「BINGO!」(2007年)が実は初めて買ったAKBのCDだったりする。でも、その後、この「ポニシュ」まではAKBにハマることはなかったんだよな。というか、どちらかというとアンチだった。

Mステで「スカート、ひらり」(2006年)のパフォーマンスを見た時なんて、スカートをひらひらさせるパフォーマンスがキモヲタロリコンのオタクのために性を売っているようにしか見えず、気持ち悪いと思い、これを喜ぶファンにも、そういうパフォーマンスをしている彼女たちにも嫌悪感を抱いたほどだった。その後の「制服が邪魔をする」(2007年)などでも同様の印象を持った。

でも、何故か、「制服」の次のシングルである「BINGO!」は素直に良い曲だと思い、CDシングルを買ってしまった。多分、「ポニシュ」と近いものがあったんだろうなとは思う。でも、それに続くシングルは買うことはなかった。というか、相変わらずアンチ寄りで、「ロマンス、イラネ」(2008年)が出た時は、「イラネェのはお前らだよ!」と言っていたくらいだし…。

 

その後、キングレコードに移籍した辺りから、徐々にAKBの曲っていいかもと思うようになり、「大声ダイヤモンド」(2008年)とか「言い訳Maybe」(2009年)なんて、「スクールカーストでいうところの上位に入れなかった、うちらにピッタリ刺さる曲じゃん!」って感じてしまった。
そして、「RIVER」(2009年)で遂にオリコン1位を獲得し、曲自体もカッコいい曲だし、彼女たちやそのプロデューサーである秋元康、そして、ファンへのイメージは改善されはしないものの、AKBの楽曲自体に対する興味は徐々に出てくるようになっていた。

そんなタイミングでリリースされたのが、この「ポニシュ」だった。自分はリリース時にこの曲の魅力について、「80年代アイドルが好きだった人たちが好むような王道アイドル・ソングを現代の感覚でよみがえらせた曲」と分析していたが、おそらく、アイドルから距離を置いていた自分が、この曲をきっかけにその世界に戻ってきたのは、そういう要素の影響なんだろうなとは思う。そして、AKBグループのファンに40代、50代のファンが多いのも、そういう懐かしさと新しさの同居している部分によるところが大きいんだと思う。

とはいえ、この時点ではまだ、AKBのファンや彼女たち自身、そして、プロデューサーの秋元康に対する気持ち悪いという印象は持ち続けたままだった。この「ポニシュ」のMVで、犬が彼女たちの着替えを覗くシーンは気持ち悪いと思った。特に、彼女たちが脱いでも胸の部分が何かで隠されていて見えないってのが気持ち悪くて仕方なかった。次のシングル「ベビーローテーション」(2010年)のMVでのメンバー同士のキスも同様に気持ち悪いと思った。

でも、ハマりはじめてしまうと、そんなのどうでもよくなってきたんだよな…。ハマるきっかけは、、やっぱり、推しメンができたことだろうね。
「ポニシュ」が使われていたイトーヨーカドーのCM(「いってみヨーカドー」のキャッチコピーでおなじみのやつ)で浴衣姿のともちんを見て可愛いと思ってしまったんだよね…。(ちなみに自分が初めて名前を認識したメンバーはまいまい)
そして、ともちんに限らず、「普段の制服みたいな衣装より、浴衣の方が可愛いじゃん!」と分かってからは、もう沼にはまってしまったって感じ…。

その後、推しメンは色々と推移したけれど、今でもAKBグループをチェックし続けているのは、この「ポニシュ」がきっかけなのかな…。

この曲、やっぱり、イントロがいいよね!イントロ聞いただけでも上がるものがあるしね。あと、スクールカースト上位に入れなかった人間の気持ちが反映された歌詞も共感するしね…。秋元康って、どちらかといえば恵まれた環境で育ってきたはずなのに、何故、負け犬側の気持ちが分かるのかは謎だよな…。

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