自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

The 1975『仮定形に関する注釈』

正直なところ、The 1975に関しては過大評価だと思っていた。

確かにアルバムはUKチャートのみならず、USチャートでも上位にランクインしているし、ブリット賞受賞のみならず、グラミー賞ノミネートも果たしている。好きな曲も、良く出来ているMVも結構ある。
でも、ロック好き、洋楽好きを名乗るなら評価しなくてはいけないみたいな圧力があるのが嫌だったんだよね。一時期のレディオヘッドにもそういうものを感じていたけれどね。まぁ、そういう雰囲気を作っていたのは、ロートル洋楽雑誌のロッキング・オンだったのだが…。

あと、彼らを気に入るきっかけとなったのは多くの日本の洋楽ファン同様、1stアルバム収録の「チョコレート」だったんだけれど、2ndや3rdでは、「チョコレート」などで感じた80年代ニュー・ウェイブリバイバル的な要素が薄くなってしまったってのも、イマイチ乗り込めなかった要因かもしれない。

でも、今回はそういう懐かしい要素が再び全面に出てきたんだよね。80年代だけでなく90年代の要素もちょっと混じりつつって感じではあるけれど。しかも、UKやUSだけでなく、邦楽の要素も混じっているって感じがする。それが個人的には1stの頃に好きだった感覚を取り戻すきっかけにはなったかな。

多くの人が指摘するように、「ミー・アンド・ユー・トゥギャザー・ソング」なんてスピッツだしね。つまり、80年代洋楽ロックを90年代にJ-POP化したのがスピッツだとすれば、その90年代邦楽を現在の洋楽ロックに昇華させたのがThe 1975ってことなのかな。「ガイズ」の歌詞に“初めて日本に行った時が最高の出来事”なんてフレーズがあるから、彼らが邦楽の影響を受けた可能性もあるのかもしれないなと思ったりもした。

そして、今回のアルバムで最大の80年代的楽曲といえば、「イフ・ユーア・トゥー・シャイ(レット・ミー・ノウ)」かな。
これまた、誰もが指摘しているが、ティアーズ・フォー・フィアーズだよね。というか、「ルール・ザ・ワールド」だね。80年代名曲・ヒット曲特集の中に混ぜてかけても違和感ないくらい。勿論、現在のサウンド・プロダクションにはなっているけれどね。

まぁ、TOKIO HOT 100で今回のアルバムの曲が上位にランクインするのも納得って感じかな。

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