自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

ランボー ラスト・ブラッド

面白いか否かはさておき、果たして、コレは「ランボー」シリーズの作品なのだろうか?というのが正直な感想かな…。

これまでのシリーズは警察や軍が絡んだ話だったが、今回の敵は人身売買組織だからね…。しかも、ランボーといえばタンクトップとか上半身裸といったイメージが強いが、今回はずっと袖付きのシャツを着ているし。というか、普通のオッさんの格好だしね…。

 

ストーリー自体も、犯罪者に襲われた家族のために戦うという、ここ最近のリーアム兄さんの一連のサスペンス・アクション系の作品。もしくは、昔のチャールズ・ブロンソンの「デス・ウィッシュ」シリーズみたいなもんだし、終盤の犯罪者を倒すために自宅に罠を仕掛けるなんてのは「ホーム・アローン」だし、敵の残虐的な殺し方はふた昔以上も前のスプラッター映画みたいだ。

しかも、ストーリー展開はツッコミどころだらけ!

いくら犯罪組織が相手とはいえ、残虐的に殺人を行ったランボーが米国とメキシコの国境を簡単に行き来できるのは謎だし、その犯罪組織も簡単にメキシコから米国に入国できている。

それから、スタローンは英語を話しているのに、メキシコ人キャラはスペイン語を話していて会話が成立しているというのもなんだかなという感じ…。まぁ、お互い相手の言語は理解しているが話すのは自国語の方が得意ってことなんだろうが…。まぁ、メキシコ人キャラがずっと英語を話しているよりはリアリティがあるのかな?

そして、あれだけ大乱闘したのに地元警察は来ないのか?1作目はランボーと警察の対立の話だったし、今作だって冒頭に地元当局の人たちが出ていたよね?

 

それにしても、相手がマイノリティだろうと、女性だろうと、悪いことをした奴には暴力も脅しも辞さないってのは好感が持てた。

今の米国映画は変にポリコレ意識が強くて、非白人とか女性とか同性愛者を悪者にできない風潮があるからね…。

 

そりゃ、過剰な対応かもしれないけれど、もとをただせば犯罪行為を働いた黒人が悪いのに、その黒人を追い詰めた警察官の方が犯罪者にされてしまうという、おかしなBlack Lives Matterの風潮は個人的には大嫌いだ。

だから、そういう思想が蔓延している今の米エンタメ界では、こういう作品は評価されないんだろうなとは思う。現に本作はラジー賞の最低続編賞を受賞しているし。(まぁ、ラジー賞に関してはスタローン作品を酷評するのをネタにしている部分はあるが…)

でも、言うほどマイノリティや女性差別の作品ではないと思うんだよな。ランボーは娘のように育てているメキシコ人少女のために戦うんだからね。敵はメキシコ人かもしれないけれど、身内もメキシコ人だしね。

要はクリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」とか「運び屋」に近いのかなという気がする。保守的な男で気付かぬ差別行為はしてしまうかもしれないが、別に身近な存在のマイノリティに対しては差別的感情を持っていないという感じかな。

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とはいえ、戦場感の薄い「ランボー」って、なんだかなって感じだな…。

ストリート・ファイトで終わりガッカリした「ロッキー5 最後のドラマ」みたいな物足りなさがあるな…。