自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

君が世界のはじまり

ポスターなとでもメイン扱いで取り上げられている2人(松本穂香&中田青渚)を中心にした話かと思っていたら群像劇だった。しかも、クライマックスであるはずのTHE BLUE HEARTS「人にやさしく」演奏シーンに中田青渚は参加していない。何か中途半端だな。


また、THE BLUE HEARTSを効果的にストーリーに絡めた作品という触れ込みだったが、きちんと使われていたのは、オリジナル版・劇中の即席バンド版・エンディングにかかる松本穂香のアカペラ版で3回流れる「人にやさしく」だけ。「キスしてほしい」は台詞ではネタにされたりしていたが、曲自体は小音量でかかるだけ。で、使用された楽曲もこの2曲だけだし、登場人物のTHE BLUE HEARTSへの思い入れについても言及されていない。音楽映画としては失敗作と言わざるをえない。

同じ音楽に触発された10代を描いた青春映画という点では、ブルース・スプリングスティーン好きのパキスタン系男子を描いた「カセットテープ・ダイアリーズ」に遥かに及ばない出来だった。
まぁ、ミニシアター系邦画好きの人たちには本作はマンセーされるのだろうが、音楽マニアの自分には非常に物足りなく感じた。

あと、閉店が迫るショッピング・モールの扱いも中途半端。社会情勢や経済情勢を反映させた社会派映画にしたいのなら、もう少し、そういう面を描かないと。また、名前を出してしまうが、「カセットテープ・ダイアリーズ」は80年代の英国の社会情勢や経済情勢がしっかりと描かれつつ、現在の世界が抱える問題にもリンクしていたからね。
こういう描写が出来ないのが、“邦画は半径○メートルの世界しか描かない”と揶揄される要因だよね…。

最後に一言。ネット上では、こういう作品って絶賛する声ばかりで、批判する人は映画を見る目がない扱いされるんだろうが、自分は堂々と物足りない作品だったと宣言したい!

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