自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

3年目のデビュー

これまでに発表された秋元系アイドル(AKBグループ、坂道シリーズ)のドキュメンタリー映画は、イベント上映のみの作品や海外グループ作品などイレギュラーなものを除くと、AKB48が5本、SKE48が2本、NMB48HKT48がそれぞれ1本ずつ、乃木坂46が2本と過去11作品が公開されている。厳密にはシリーズものではないが、今回の日向坂46のドキュメンタリーは12本目の秋元系アイドルのドキュメンタリー映画ということになる。そして、このうち10本がNHK製作で、SKEの2作目と今回の日向坂だけがTBS製作となっている。
 
この幹事社となっているテレビ局の差がそのまま、作品の質につながっているという気がする。NHK製作の場合は作品によって、出来・不出来はあるものの、一応、映画として作られているとは思う。ぶっちゃけ、NMBのやつなんて、“公開された新作邦画は全て見る”とか、“アイドル好きの彼氏or彼女の付き添い”とかいう人を除けば観客のほぼ100%が秋元系アイドル好き、そうでないとしても何らかのドルヲタだと思うが、監督自体がグループに関する知識がなかったせいか、初心者にグループを紹介するための映像みたいになっていたし、AKBの3本目のドキュメンタリーでは、試写会でともちんの卒業発表シーンをカットして上映するとかいうふざけたこともしたりした。でも、全体としては映画館で上映することを意識した作品にはなっていたと思う。
でも、SKEの2作目のドキュメンタリーと今回の日向坂の作品は全然、映画の作りではないんだよね。良く言っても、テレビのドキュメンタリー。悪く言えば、ワイドショーの特集Vって感じ。
今回の日向坂の場合でいえば、メンバーや関係者の話しているシーンや歌詞シーン以外はほぼ全編ナレーションが入っている。しかも、このナレーションがメンバーを敬称付きで呼んでいる。完全にテレビ番組の作りだよね。
それから、スーパーも多すぎる。名前や地名スーパー、年月日以外は映画なんだから必要ないでしょって思う。歌詞スーパーなんてなくてもいいと思う。それから、きちんと聞き取れるのにコメントフォローのスーパーが入っている場面も多かった。完全にテレビの発想なんだよね、作りが。
あと、これはNHK製作の作品にも言えることだけれど、秋元系アイドルのドキュメンタリーって、モザイク(正確にはブラー、以下ボカシと表記)が多すぎる。
オーディションとか会見の場にいる辞めたメンバーや関係者とか、イベント会場にいるファンとか、家族の写真とかボカシだらけ。テレビなら仕方ないけれどさ、映画なんだから、きちんと権利関係をクリアにできたものをボカシなしで使えよって思う。しかも、本作のボカシは雑で画を汚くしているだけ。
あと、ザ・ローリング・ストーンズのロゴ(ベロ・マーク)にボカシがかかっているのには笑ってしまった。権利関係がクリアにできない可能性が高いって分かっているんだから、普通はディレクターなりカメラマンが“背景を変えよう”と言ってメンバーの立ち位置を変えさせると思うんだけれどね。
 
というか、そんなボカシ問題以前に、デビュー・シングルがリリースされるまでのパートはほぼ先日テレビ放送された予告編ロング・バージョンと称する特番とほとんど変わらず、何も新しい情報がないって感じだった。ますます、映画である意味を感じない。
 
そして、気になったのは「3年目のデビュー」というタイトル。おそらく、長濱ねるの加入が発表された2015年秋=けやき坂46(ひらながけやき)の誕生を基準としていると思う。つまり、それから丸3年を迎えた2018年秋以降は3年目ではなく、4年目になる。
ひらがなけやきが日向坂46に改名することを発表したのは2019年2月だし、デビュー曲「キュン」がリリースされたのは同3月だから、どちらをデビュー日と取ったとしても確実に4年目なんだよね。
 
なので、映画として見ると落第点と言わざるをえない。でも、こさかなや、かとし、きょんこ、丹生ちゃんが可愛いんだよな。なので許せてしまう…。

f:id:takaoharada:20200809170610j:plain

川 晃弘