自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song

アニオタ系のブログなどでは今年最高のアニメ映画なんて言われているが、正直、信者がマンセーしているだけだろうと本気にはしていなかった。でも、コロナ禍に大ヒットした作品を見ずに映画ファンを語っていいのかという思いもあるし、何よりもAimerの主題歌「春はゆく」がめちゃくちゃ良い曲である。個人的にはAimer曲の中では「Ref:rain」の次に好きな曲かもしれない。勿論、コロナ禍の中、オタクで大盛況となっている映画館に行くのは怖いという気もしたが、とりあえず見ることに決めた。

本作を絶賛している人の多くが言っているように、確かにこれまでのゲームやテレビアニメ、映画を見ていない人には、少なくとも、今回の3部作映画の前2作は見ていないと理解不能な部分が多い。自分はこれまで、何度かこのシリーズ関連の映画を見ようと思いつつも、そのたびに何らかの理由で断念していた人間なので、確かに見ていてはじめのうちはポカン状態だった。

それにしても、過去作を見ていないと面白いと感じないような作品を今年最高の作品と絶賛する人たちはおかしいんじゃないかなと思う。少なくとも、アニオタというのは映画的な発想がないんだろうなと思う。
シリーズものだろうと、リメイクやリブートだろうと、スピンオフやプリクエルだろうと、テレビドラマやテレビアニメの劇場版だろうと、テレビドラマやテレビアニメの総集編だろうと、小説やコミックの映画化だろうと、過去作品を見ていない人、原作を読んでいない人でも、その1本だけできちんと評価できるのが映画だと思うんだよね。

一見、尻切れトンボに見える「帝国の逆襲」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」が評価されているのは、きちんとその1作だけで成立しているからだし、「ロード・オブ・ザ・リング」が3部作全てアカデミー作品賞にノミネートされたのに、同シリーズの関連作品「ホビット」シリーズや同じファンタジーものの「ハリー・ポッター」シリーズが賞レースで相手にされないのは、そういうことなんだよね。過去作を見ていないと話が通じない。原作を読んでいないと分からない箇所が多いってことだろうね。

なので、本作は映画として評価すれば傑作からは程遠いと言わざるをえないと思う。いくら、アニオタが絶賛しても、アニメ映画としてはダメだと思う。でも、それなりの本数を見ている映画好きは、見ているうちにすぐに人間関係とかを察知する能力が発達しているから、酷評するほどでもないんだけれどね。そして、その人間関係や個々のキャラ設定を把握さえできれば、結構感動できるしね。ぶっちゃけ、見て良かったと思うし。

というか、本作は実写も含めた邦画としては異例と言えるほど、音響設計が良かった。ハリウッドの超大作レベルの出来だったな。迫力ある音響だった。それは感心する。

それにしても、日本のアニメのニュースを伝えるシーンって、何で、あんなにニュース原稿がでたらめなんだろうか!日本のアニメ製作者ってニュースも見ないし、新聞も読まないのが多いんだろうな。そりゃ、ネトウヨ思想にかぶれるのが多いわけだ…。

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