自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

Reframe THEATER EXPERIENCE with you

この秋、多くの音楽ドキュメンタリー映画が公開される。というか、緊急事態宣言の前後で公開延期になった作品がリスケジュールされて上映されるものや、元々、この時期公開予定のものも含めて、とりあえず、劇場公開作品という肩書きだけ手に入れて、とっとと消化して、後はソフト化で儲けようという魂胆がミエミエで腹立たしい。

音楽マニアとしては、このうちの1本でも多く見たいところだが、きっと見逃す作品も続出するんだろうな…。

そんな中、とりあえず、Perfumeのコンセプト・ライブを収録した作品を見た。

 

キネマ旬報の鑑賞記録アプリ「キネノート」に登録されているということは、一応、映画扱いということになるのだろうから言わせてもらうが、本当、酷い映画だ。現時点での今年のワースト作品は本作に更新されてしまった。

仮に本作が映画ではなく、アーティストのライブ・ビデオだとしても最低の作品だし、コンセプトの強いステージということで舞台として捉えたとしても、シネマ歌舞伎ゲキシネのような舞台の収録映像と比べると遥かにクソと言わざるを得ない。

 

あえて言えば、現代アートの展示会場で流れているイメージ映像を延々と見させられているような感じかな。展示会場で流れる映像なら、数分眺めるくらいだけれと、これは85分もそれが続くからね…。まぁ、普通の映画に比べれば、遙かに短い尺になっているのは、それ以上見せるのは拷問だと本映像作品のディレクターやプロデューサー陣は分かっているからなんだろうね。

 

というか、アーティストのライブ映像としても、舞台の収録映像としても、ほぼ全編、アーティストのヨリがないっておかしいだろ!

 

日活(映画)、NHK(テレビ)、アミューズ(芸能事務所)、ユニバーサル(レコード会社)などの映像のプロ中のプロが本作には関わっているのに、こんな内容になる原因として考えられることは1つしかない!

 

結局、何故、こうなったかというと本作はディレクターやプロデューサー、カメラマン、編集マンには何の権限もなかったんじゃないかな?おそらく、ディレクターよりも振付師やビジュアル・デザイナーの名前がでかく出ているところを見ると、この2者がディレクターやプロデューサーよりも権限を持っていて、こういう画面にしろという指示を出したんだろうね。

 

振付師はそりゃ、自分の振付を見てもらいたいから、全身を撮れと言うだろうし、ビジュアル・デザイナーは自分が手がけたセットやライティングをフルで見せたいって言うよね。そしたら、アーティストは全身のグループ・ショットで撮るしかなくなるよね。

 

唯一、メンバーの1Sが抜かれたシーンがアンコールも含めた全パフォーマンスが終了した後の挨拶の部分だけだからね。要は、振付師やビジュアル・デザイナーの演出が入っていないところだから、許されたんだろうね。

挨拶の最初のうちは、恐らく何か言われると怖いから全身の3Sにしていたのだろうが、途中から話しているメンバーの1Sを抜くようになったのを見ると、この部分には振付師やビジュアル・デザイナーは関与していないから自由にできるって判断したんだろうなと思えてくる。

現場ではディレクターやカメラマンがめちゃくちゃ、ストレス抱えながら収録していたんだろうなというのが容易に想像できるね。

 

それにしても、本編とアンコールの間に該当する部分に、収録当日、ステージ上のスクリーンに映写していたスタッフロールを再撮のまま映画に使うって何考えているんだ?普通ならカットだし、使うとしても再撮ではなく、きちんとしたものを使うだろ!本当、マスターベーションが酷すぎる!というか無知なんだよな、映像に対して。

 

どうして、酷い画になったのが振付師らのせいだという推測をするに至ったかというと、以前、自分が能の舞台を取材した時に先方から言われたことを思い出したからなんだよね。その取材時に担当者から“アップは撮るな”って言われたんだよね。言い分としては“能は面だけではなく全身で表現するものだ。だから、面のアップを撮られては意味が伝わらない”というものだった。

今回のPerfumeに関しても、振付師やビジュアル・デザイナーがそれに近いことを言ったのではないかなと思う。

そりゃ、言いたいことは分かるけれどさ、それは前方の数列を除けば、ライブ・エンターテインメントではほとんどの人が演者やセットを含めて舞台全体をフルサイズで見るから、そういう演出意図が通じるんだよね。

でも、映画やテレビでそれをやられたら、ほとんど何が映っているか分からない状態になってしまうということが理解できないんだろうね。

 

そして、ふと思った。欅坂46のMVって、平手以外、誰が映っているかよく分からない作品が多かったけれど、あれって振付師のせいなんだな…。やたらと、欅坂のMVって、TAKAHIROがクローズアップされるが、彼の意見を尊重し、彼に気を使うから、振付の全体が見られる広い画が多くなり、平手以外認識できない現象になるんだなというのを改めて思った。

 

ところで、世の中には秋元系アイドルや一部ジャニーズの口パクを批判する人が多いのに、Perfumeマンセーする人が多いのは何故?そして、生演奏のバック・バンドとともに生歌唱するベビメタはアイドル扱いするのに、Perfumeをアイドル扱いしてはいけない風潮は何故?まぁ、どうでもいいんだけれどね。

あと、最近、痩せたせいか、あ〜ちゃんの世界一可愛いゴリラ的イメージってなくなったよね。

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