自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

小説の神様 君としか描けない物語

緊急事態宣言下あるいは、その前後に公開予定だった作品で公開延期になった作品の多くは、緊急事態宣言解除後、新たな公開日を設定されているが、中には公開規模が変更になった作品も多いし、「劇場」のように劇場公開と配信が同時になったり、「泣きたい私は猫をかぶる」のように配信オンリーになったものもある。そして、本作「小説の神様」のように劇場公開はされたものの配給会社が変わったものもある。


本作は元々、邦画メジャーの松竹の配給で公開されるはずだったが、主演を務める佐藤大樹が所属するEXILE一族の事務所LDHの映画レーベルの配給に変更となっている。
その影響なのか、EXILE一族とハシカンのW主演とは思えないほどの上映館数の少なさとなっている。上映されているのはユナイテッド・シネマとかイオンシネマなどが中心で、東宝や松竹といった邦画メジャーの運営するシネコンでは上映されていない。ホームページ上ではTOHOシネマズやMOVIXのサイトの名前も上映館として記されているのに、現時点では「上映スケジュールが存在しない」となっている。もしかすると、昔の五社協定のようなものがあり、松竹の配給を蹴り、独自配給に乗り出した本作をメジャー系は締め出しているのだろうか?

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松竹などメジャーは、公開延期になった作品のリスケジュールと、元々、夏以降に公開予定だった作品が混在しているから、個々の作品の上映時期はタイミングを見て公開しようとしているのだろうが、製作会社や芸能事務所にはそこまでの余力はない。だから、今すぐにでも、当初の見込みより少なくても収入が欲しい。そういう思いでメジャーの配給網を捨ててでも、早期の劇場公開に踏み切ったのだろうが、果たして、作品やファンにとっては、これで良かったのかなという気もするな。まぁ、スタッフ・キャストはすぐにでも収入が欲しいから早期公開を望んでいるようだが、出演俳優のファンや映画ファンへの配慮には欠けている気がするな。

 

そして、ファンへの配慮といえば、今回、舞台挨拶中継付きの上映を見たけれど、これって、関係者とマスコミ以外をシャットアウトしたイベントだよね。客席全体が映ったわけではないが、前方の座席が関係者・マスコミ分以上にあいていたし、登壇者がマスクなしで話していたし、司会者による観客への注意事項のアナウンスもなかったし、拍手も笑い声もほとんどなかったから間違いないと思うが。でも、思うんだけれど、無観客舞台挨拶って意味あるのかな?結局、邦画界って初日舞台挨拶(最近は金曜日初日の作品が増えたから、昔ながらの土曜日開催だと2日目舞台挨拶になるけれど…)でしか、公開されたての新作をPRする手段がないってことなのかね?まぁ、元々、有観客の舞台挨拶でも、観客というよりは、マスコミのためにやっているって感じだったからね…。とりあえず、コロナ禍でも新しい手段を思い付けない邦画界ってのは、本当、思考が古いんだろうね。

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それはさておき、作品自体についてだが、上映開始後からしばらくモノクロだったのでビックリしてしまった…。“もしかすると映写ミスか?”と思ったほどだった。
EXILE一族のメンバーとハシカンのW主演。要はアイドル映画といってもいい作品だし、内容もいわゆるキラキラ映画的なものだから、モノクロが延々と続くなんて、普通はありえないんだけれどね。そういう意味では、かなり実験的でアーティスティックな作品と言えるのかもしれない。
でも、ヒロインが自分で小説を書かず、同じく高校生作家である同級生に自分のアイデアを小説化させる理由ってのが、本当に酷い。まだ、ありがちな難病を理由にしてくれた方が納得できた。あるいは、実は死んでいたでもいいけれど。

 

それにしても、高校生の頃から小説や脚本などの公募に投稿し、ことごとく落とされてきた自分からすると、本作のメイン2人みたいに若くして、作家デビューできた連中って、本当、嫉妬の対象にしかならないんだよな。
特に最近って、高校生とか大学生とか、主婦とかニートとか、芸人とかAV女優とか、何か経歴上でプラスアルファがある。要はマスコミが飛びついてくれるようなネタがある人ばかりが各文学賞の受賞者・候補者になっているような風潮があるから、尚更、本作のメイン2人には共感できないんだろうな。しかも、美男美女だしね。

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