自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

シカゴ7裁判

賞レースを賑わせると予想されているNetflix映画「シカゴ7裁判」が配信に先駆けて劇場で上映されるという情報を知ったので、急遽、鑑賞することに決めた。

本当はアップリンクで見るのは嫌だったが、23区内の上映館で昼間に上映しているのは渋谷のアップリンクしかないということで仕方なく、ここで見ることにした。

パワハラの被害にあったスタッフを支援するため、アップリンクで映画を見ようと主張する人たちがいるけれど、経営陣が変わったわけではないから、アップリンクで映画を見ること=パワハラやっている連中の利益になるわけだし、そんな矛盾だらけの支援なんてしたくないしね。

でも、どうしても賞レース有力作品を劇場で見るチャンスは逃したくなかったので、久々にアップリンクに足を運んでしまった。

そして驚いたことがある。全員がそうとは言わないし、感じのいい人も何人かはいるが、圧倒的多数は無愛想だし、客とぶつかりそうになっても(狭い劇場だしね)謝るどころか、お辞儀すらしない。というか、“お前ら邪魔だ”みたいなオーラを出しているし、かなり、上から目線な感じがした。

これって、パワハラを受けた人間が別の人間にパワハラしているようなものでは?

部活で先輩から無意味なしごきを受けた人間が後輩に同じことをしたりとか、親から虐待されて育った人間が自分の子どもに虐待したりするのと同じなのかな?

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前置きが長くなってしまったが、この「シカゴ7裁判」、アカデミー作品賞ノミネートはほぼ確実と言っていい出来だと思う。

 

まぁ、トランプ憎しの思いを募らせ、どんどんとおかしなポリコレを進めてしまっているハリウッドによる完全なプロパガンダ映画だけれどね。

 

民主党政権で進められたベトナム戦争に反対するデモを先導した人たちの話だから、本来なら悪いのは民主党のはずなのに、悪役は共和党だからね。民主党から政権を奪取した共和党ニクソン政権のせいで、不当な裁判になったという話がメインになっているしね。

 

それから、理想のためには暴力もやむなしという描写があるのは、Black Lives Matterに関する運動で暴動を起こした黒人を批判したり、警官から過剰な捜査を受けた黒人がもとをただせば犯罪行為に関わっていたのが悪いんだろうと指摘したりすると人種差別主義者扱いされる今の風潮とも重なる。

しかも、シカゴ7と言っておきながら、実際は被告は8人いて、そのカウントされない1人が黒人であること=黒人をないがしろにしていることも、全ての人種の命よりも黒人の命が大事だという主張に重なって見える。しかも、このブラックパンサーの活動家は、この裁判とは関係ないと判断され、途中退場するのに、エンドロールではこの黒人活動家役の俳優がトップに出てくる。つまり、完全にBLMを意識した作品であることは間違いない。

 

個人的には、最近のハリウッドはおかしいと思っている。いくら、セレブたちがトランプ政権はおかしいと主張しても国民の多くは支持している。だから、いつまで経っても政権は変わらない。そのストレスを解消するためにパラレル・ワールド的な理想郷を作ろうと、エンタメ界のルールを変えまくっているようにしか見えない。なので、エンタメ本来の面白さが薄れてしまっていると思う。

 

こういう民主党寄りのプロパガンダ映画は大嫌いなのだが、本作は程よいコメディの要素もあったし、何よりもラストに感動した。法廷で、この裁判の期間中にベトナム戦争で命を落とした兵士の名前を一人一人、読み上げるだけなのに、コレが泣けるんだよね!伏線もきちんとあったしね!お見事!これは賞レースを賑わせる作品になるのは間違いないね!

 

ところで、米国の映画やドラマを見ていると、法廷のシーンとかお偉方と面会するシーンとかで、ジャケットの前ボタンをしめ、身を引き締めたのであなたに敬意を表してしますよってアピールする描写をよく見かけるけれど、あれって日本人からすると無意味な習慣だよね。

面接の際は、面接を行う部屋に入る前の待合室とかでの様子も監視されているみたいな意識が強い日本人からしたら、法廷に入る前、お偉方と面会する前から前ボタンをしめておけよ!って感じだよね…。

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