自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

リトル・サブカル・ウォーズ 〜ヴィレヴァン!の逆襲〜

本作を見て一番気になったことは、サブカルを取り締まる連中=悪役を左翼やパヨクとして描いているのか、それとも保守政権やネトウヨとして描いているのかということだった。

本来のサブカルは反主流なわけだから左翼的だと思う。

でも、本作で悪役となっているサブカルを取り締まる連中は、平等や平和を訴えている。それって左翼思想だよねとも思った。

そして、このサブカルを取り締まる連中は「サブカル好きは差別主義者だ」とも主張している。確かに、現在の日本でアニメやコミック、特撮などを愛好する人たちにはネトウヨ思想と親和性の高い人が多く、自民党支持者も多い。

また、左翼やパヨク、リベラルからは、「とっくの昔に古い考えになったセクハラやパワハラの概念から抜け出せず、国際的な感覚がない人たち」として批判されている。オタク文化を含めたサブカル好きには、人種や性別、職業、宗教などに関して差別や偏見を持っている人間が多いのは否定できない事実だとは思う。

だから、こういう人たちに投票してもらうために、自民党など保守勢力側はアニメやコミックに対する理解を持っているアピールを一生懸命にしているのだろうと思う。

世界的な流れから見れば、性的・暴力的な描写や人種、性別、職業、宗教などに関する差別や偏見を助長するような表現は規制する方向になっている。これは仕方ないことだと思う。

オタク・サブカル側からすれば、平等や平和、ポリコレなどを理由に、今まで自分たちが愛してきた描写を削除しようとする野党や左翼、パヨク、リベラルが悪に見えるのかもしれない。

なので、自分たちと同じように「差別や偏見に満ちている」と野党などに批判される思想を持っている自民党に親近感を抱いてしまうのであろう。

でも、どう考えても、体育会系脳に毒された自民党の議員たちはオタク文化なんて見下しているのに、その口先だけの言葉に簡単に騙されてしまう連中がファンのみならず作家側にも多いのには呆れてしまうばかりだ。

 

ところで、本作では「メジャー作品をけなすくせをやめろ」というオタク・サブカル側への問題提起もされている。これは、「世界は一つ」的な左翼思想なのか、それとも、「皆が安倍政権を支持しているから、菅政権を支持しているから自分も支持する。それの何がいけないの?」的な反野党思想なのだろうか?

結局、この作品を見ていると、どっちにも取れるんだよね…。

 

それはさておき、サブカルって何?って思いも本作を見ていると起きてくるんだよね。

本作でネタにされている宮沢賢治七人の侍ザ・ビートルズスター・ウォーズキン肉マン、タッチなどって、サブカルチャーではなくメインカルチャーだよね?

出てきて間もない頃から人気はあっても、大人や批評家からは酷評されたという意味でサブと言っているのだろうか?でも、七人の侍は出てきた当初から絶賛されているし、現在になっても日本映画を代表する1本と言われているしね。

昔は人気あったけれど、今は忘れられている作品ならサブカルなのかもしれないけれど、七人の侍はサブではないよね。それとも、エンタメやアートに関する知識を持っている人をサブカルとでも言いたいのか?

 

あと、終盤になって、日本のアーティストや作家にだけ敬称がつくようになったのは宣伝臭がして気持ち悪かったな。途中までは基本、国内外問わず呼び捨てだったのにね。

そうそう、個人的にはCDショップ店員とか書店員がアーティストや作家に“さん付け”するの嫌いなんだよね。

本人がイベントとかサイン会で店を訪れている時は別にいいけれど、そのアーティストのCDや作家の書籍を買った客に対して店員が“○○さんのポスター付きますが、お持ちになりますか?”って聞くのおかしいよねって思う。CDや書籍ってのは自分の店の売り物なわけだから、そのCDを出したアーティストや書籍の著者に“さん付け”するってのは、外部からかかってきた電話に“うちの○○さんは席を外していらっしゃいます”って言うようなものだと思うんだけれどね。

でも、客側も“アーティストや作家を呼び捨てにするな”って思っているの多いんだよな…。

まぁ、世の中の考え方が変わったんだから、身内に対する“さん付け”に対しても許容的になっているのかもしれない。だったら、それはそれでいいんだけれどさ、こういう“さん付け”する店員って、日本のアーティストや作家には“さん付け”するけれど、海外のアーティストや作家は呼び捨てにしているんだよ。それがイラつくんだよね。意識していなきゃ、そうはならないよね、普通は。コレを無意識でやっているとしたら、本当、日本人ってのは差別的な民族なんだなとは思う。

もっとも、植物や生物の外来種をやたらと敵視するし、正しい日本語を指導する人間は必ずといっていいほど、“外来語には「お」を付けない”と言うから、まぁ、日本人は根っからの差別主義者なんだとは思うが…。

 

そういえば、本作の編集の仕方って、やたらと同ポジのカット編集が多かったな。映画やドラマでは何度も同じことを繰り返したことを強調するなどの理由がなければ同ポジのカット編集なんて極力しないんだけれど、本作ではやたらと使われていた。実際の店舗で営業時間外に撮影するという厳しいスケジュールだったから、とにかく撮るだけ撮って、テンポの悪い所や言い間違えた所などを後から切っていったから同ポジ編集だらけになったのかな?

それとも、映画やドラマというよりかは、バラエティ的な発想なのかな?やたらと説明スーパーが入るのもバラエティやワイドショーのノリだしね。

余談だが、客のいない夜のモールではしゃぐ店員ってマネキンを思い出すな…。まぁ、あれはデパートだけれどね。

 

 ちなみに本作を見た最大の動機はSKEのみなるんが出ているから。出番は少なかったが、金髪ギャル店員姿、結構、可愛いと思った。

彼女が出ている映画やドラマ、舞台の全てを追っているわけではない。というか、見逃しているものの方が多いが、結構、彼女の演技好きなんだよね。舞台も2作品見ているしね。彼女の演技を好きになった理由は「AKB48SHOW」でやっていたコント「妄想少女」シリーズかな。これで、妄想の激しいアイドルを演じていた彼女を見て、なかなか演技がうまいなと思うようになったんだよね。このシリーズでマネージャー役をやっていた野間口徹は別の作品でもマネージャー役をやるようになっているが、やっぱり、大場美奈野間口徹のコンビは最高だったってことなのかな。

 

《追記》

本作で悪役が「ビートルズなんて嫌いだ」と言いながら、次々とアルバムのタイトルを挙げていたが、前期の作品と最終アルバム『レット・イット・ビー』は挙げていなかったな…。結局、通ぶった連中がいいと言うものしかいいと言えないってことじゃん!

この悪役が「マジョリティーの声をバカにしている」と批判しているサブカル勢と同じことをやっているよね!

そういうのって結局、自民党を支持しておけば無難でしょ?って考えにも通じるのでは?

本当、矛盾だらけの作品だな…。

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