自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

第33回東京国際映画祭

相変わらず国際感のない国際映画祭だ。

確かにここで見なければ一生スクリーンで見ることができないのではと思われるような作品や、日本での一般公開まで長い年月がかかりそうな作品も上映されている。

でも、一般的な映画ファンの視点で語れば、世界一つまらない国際映画祭だと思う。

それは、コロナ禍であろうとなかろうと関係ない。

アジアを代表する映画祭というのは釜山や上海のことで、誰も東京のことなんて思い浮かべない。

東京国際映画祭の略称TIFF(ティフ)は国際的にはトロントのことだと思われている。日本国内でもFは一つ足りないけれど、同じくティフと呼ばれている音楽フェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」はアイドル業界関係者やマスコミのみならず、一般のドルヲタのほぼ100%に認知されている。でも、東京国際映画祭の略称のティフに関しては東京国際映画祭の運営側の仕事をしている人(配給、宣伝、通訳含む)以外には全然認知されていないし、それどころか芸能メディアにすらほとんど知られていない。

なのに、キネマ旬報では東京国際映画祭に関するネガティヴな言及はほとんどされない。だからいつまで経っても酷いままだ。

 

まだ、00年代初頭くらいまではラインアップは3大映画祭には全然及ばないけれど、一応、映画祭としての華やかさはあったんだよね。

でも、日本で洋画が当たらなくなり、海外の大物映画人の来日が減ると、上映作品もショボくなってしまった。というか、邦画の上映が増えてしまい、全然、国際映画祭でなくなってしまった。今年はコンペティション部門がコロナの影響でないが、ここ最近はコンペに邦画数本出品なんてのが当たり前になっていた。それから、オープニング上映作品やクロージング上映作品も邦画が多い。特別招待作品で上映される洋画はほとんどが海外では公開済みだが、日本では間もなく公開される作品の宣伝を兼ねた上映ばかりになった。そんな映画祭のどこが国際なんだよって感じ。

あと、それまでは渋谷で開催していたのが、六本木開催に変わったのも映画祭から国際感覚をなくした理由の一つかな。

まぁ、邦画中心のラインアップになったら舞台挨拶をワイドショーで取り扱ってもらいやすくなるから、NHKしかない渋谷よりも民放キー局全てが居を構えている港区内でやった方がいいというのはあるんだろうけれどね。

その結果、国際映画祭ではなく単なる芸能イベントになってしまったが、それによって皮肉にも観客動員は好調となってしまったんだから、業界側としては批判できないってことなんだろうね。

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 それと同じ現象は音楽フェスでも起きている。サマソニにアーティストというよりかは芸能人と呼んだ方がいい人やジャニーズ、女子アイドル、K-POP、アニソン系が増えたり、フジロックに邦楽アーティストが増えたのもそう。海外エンタメに興味ない人が増えたから、洋楽アーティストだけでは運営費用をペイできない。だから、客寄せパンダが必要だというのは分かる。ボランティアじゃないからね。しかも、そういう芸能人やアイドルを呼べば、音楽専門でないスポーツ紙やワイドショー、ネットメディアも取材してくれる。つまり、話題になり次回の予算増につながるというのは理解できる。

でも、こういう人たちのファンって自分の目当てでないアーティストには見向きもせず、ただ場所取りだけしているんだよね。そんなのフェスじゃないでしょ。よく知らないアーティストでも、その場にいる以上はそのアーティストやそのアーティストのファンと一緒に楽しむのがフェスでしょ。だから、ネット上ではこうした金儲け主義に走ったフェスへの批判的なコメントが増えるようになった。

しかし、ロッキング・オンなどの音楽メディアは全然問題提起しないんだよね。というか、絶賛している。結局、自分たちもフェスを主催したり後援したりしているから批判できないんだよね。こういう本来はフェス向きでなかった出演者のファンは金を落としてくれるから、人数の少ない洋楽好きや邦楽インディーズ系より歓迎するってことだからね。まぁ、慈善事業ではないから利益を上げなくてはならないというのはあるのだろうが。でも、そんなので文化的に健全なイベントになると思っているのだろうか?

 

と散々、批判したが、それでも、いつ日本で一般公開されるか分からない作品。特にアジア映画(この場合は日本映画も含めてもいいかも)が見られるチャンスであるのは事実だし、日本で劇場上映されるかどうか分からない配信系映画も上映されたりるすのは感謝している。なので、今回はアクション、ファンタジー、コメディの要素が混じった韓国映画「スレート」を鑑賞させていただいた。

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