自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日

オタクが興味を示さない海外アート系アニメーション映画も、シネフィルが映画扱いしないイベント上映アニメも、年に数本しか映画を見ないくせに“過去最高の作品”などと鑑賞者がマンセーする「コナン」や「鬼滅」のような作品も(映画マニアとしては、その年の興行成績ランキングで首位争いをするような作品は無視するわけにはいかないから鑑賞している)、一般映画ファンや評論家が映画として認めているディズニー・ピクサー、イルミネーション、ジブリや新海、細田あたりの作品も、深夜アニメの劇場版などオタク向け作品も、もちろん、「クレしん」の劇場版も見る。

それだけ、色んなタイプのアニメ映画に手を出している自分だが、「プリキュア」映画を見たのは実は今回が初めて…。

テレビ版ですら、最初の2シリーズを仕事がない日や仮眠前などに、ながら見で何となく追っていただけ。3シリーズ目からは生活様式が変わり、日曜日の午前中には1週間分のたまった録画作品を見るようになったので見なくなってしまった。ここ数年は、そういう生活様式ではなくなりつつあるが、相変わらずプリキュアやライダーなどのニチアサ作品をリアルタイムで見るような生活には戻っていない。

 

そんな自分が「プリキュア」映画を見に行こうと決めた最大の理由は今回の「ミラクルリープ みんなとの不思議な1日」のストーリーが同じ日を繰り返す系のものだと知ったから。

そして、思った。やっぱり、同じ時間を繰り返す系の作品は何度も同じ時間を繰り返したことを説明するためにフラッシュ的に短くつないだシークエンスとか、アバン的なもの、エピローグなどを除けば、つまり、きちんとほぼ同じ展開を見せるのは3回程度でいいんだよね。

本作では、アバン的なシーンでそういう描写があったり、台詞で90回以上繰り返していることに言及されているが、主人公たちが同じ時間を繰り返すのは3回となっている。

①事件の発生

②同じ時間を繰り返していることに気付くが元の時間に戻ることには失敗する

③同じ時間から抜け出す方法を見つけて成功する

基本的にはこの展開でいいんだよね。

 

この手のストーリーのもので最も酷評された作品といえば、「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズ内で8週にわたって、ほぼ同じ内容で放送されたエピソード「エンドレスエイト」だと思う。アレも3週にわたる放送で収めていれば絶賛されていたんだと思う。

タイトルの“エイト”にとらわれて、同じことを8週にわたってやったから批判されたんだよね。作中の人物たちは8回どころか1万回以上も同じ時間を繰り返しているんだから、別にほぼ同じものを8回も放送する必要はなかったんだよ。おそらく、8月の8を直訳して、“エイト”にしただけなんだろうしね(これはこれでおかしいけれどね、オーガストというきちんとした英単語があるんだから)。

ぶっちゃけ、3週目から7週目で放送された内容はフラッシュで良かったんだよ。あるいは、8回全て同じ物量で見せたいんだったら劇場版としてやれば良かったんだよ。まぁ、3時間近い作品になるとは思うが。

 

ところで、今回の「プリキュア」映画は時間がテーマということもあり、(作中での主人公たちが認識している)1周目の冒頭では、目覚ましが鳴って慌てて起きるとか、トーストを焼いていることを忘れるとか、友達との待ち合わせに遅れそうなのに色々とトラブルに巻き込まれるとか、時間にちなんだ伏線を色々と仕込んでいて良くできているなとは思った。

 

時間といえば、本作の上映時間って1時間10分とちょっとしかないんだよね。でも、2時間くらいの作品に感じた。まぁ、過去シリーズのファン向けの描写もあるので、「プリキュア」文化に対して思い入れがない自分には長く感じたのかもしれないが。

それにしても、上映時間1時間10分程度で通常の入場料金って高いよな…。昔だったら、東映まんがまつりのメインクラスの作品として1時間10分前後の作品が上映され、その同時上映として、短編や中編が数本付くというパターンだったしね。

ディズニー映画も今みたいに2時間近い作品が当たり前になる前は1時間10分台から20分台が主流で、その頃の作品は、旧作のリバイバル上映や短編が同時上映されていたからね。

 今時、1時間10分前後の作品といえば、ピンク映画かイベント上映のアニメ、レイトショー公開の邦画くらいだけれど、ピンク映画は旧作と合わせて3本立てというケースが多いし、イベント上映のアニメや尺の短いレイトショー邦画は通常より入場料金が安いからね。

まぁ、本シリーズは、そうしてボッタクったチケット代金から、子どもの入場者に配られるグッズ代を捻出しているのかもしれないから、まぁ、大きなお友達がああだこうだ言う資格はないのかもしれないが。

 

その子どもに配るグッズというのは、ペンライトみたいなもので、作中には、登場人物がそのライトをふるシーンが結構あったから、コロナ禍でなければ、子どもの観客に、このライトをふってもらいながら鑑賞してもらおうという作りだったんだろうなというのが、シリーズに詳しくない者でも容易に想像できる。それから、桜が重要な要素となっていることからも、本来の春公開に向けた作品だったいうことはよく分かる。あと、「ヒーリングっど」のメンバーが新プリキュア扱いになっているのも本来は、放送開始直後の公開予定だったからというのを感じずにはいられない。

 

ただ、本作の公開延期を巡る東映の対応は遅かったよね。東宝に比べると資金力は弱いから、できれば公開延期はしたくないという事情はあるのだろうが、1回目の延期にしろ、2回目にしろ、どう考えても、国や自治体の対応を見れば、子ども向けとされる映画を公開できる状況じゃないのは明らかだったのにね。まぁ、東映なんかは保守系老害オヤジの発想がいまだに根強い会社で、こういう人たちには“コロナは風邪”と思っているのが多いから仕方ないのかもしれないが。

 

老害といえば、本作のストーリーって、土曜日の学校や職場が半ドンだった昭和の時代からいまだに抜け出すことができない老害を、若者が改心させる話ってことでいいんだよね?

東映って会社自体は保守系のイメージだけれど作品は結構リベラルなんだよな…。

ただ、学校の半ドンがなくなって(最近では、土曜日登校が復活している学校がコロナに関係なくあるようだが)30年近く経っているのに、主人公の母親が半ドンを懐かしんでいたのに、ちょっと違和感があった。母親が40代には見えないしね…。でも、主人公の年齢を考えれば40代キャラなのかな?

 

ところで、現在放送中の「プリキュア」についている「ヒーリングっど」って、やっぱり、フィーリング・グッドから来ているのかな?

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