自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

劇場版「鬼滅の刃」興収200億円突破に思うこと

コロナ禍になる前から思っていたことがある。それは「鬼滅の刃」を絶賛している人には、他のアニメ・コミック・映画に興味を持たない人が多いということ。過去にアニオタやサブカル、映画マニアなどの枠をこえてブームになったアニメの場合はそれに付随して、出演声優や主題歌などを担当するアニソン歌手の人気も高まった。でも、「鬼滅」に関してはそういうのが少ない。LiSAに関しても、「鬼滅」関連以外の楽曲の世間的な知名度は低い。あれだけ、「鬼滅!鬼滅!」と騒いでいるのに、鬼頭明里の名前を知らない人も多い。これって、過去にブームとなったアニメでは考えられなかった現象なんだよね。

映画観客を例に説明すると、この「鬼滅」を支持しているのは、要は年に1回、映画館に行くかどうか。よくても数回って程度の人たちってことなんだろうと思う。つまり、熱しやすく冷めやすい人たちってことかな。

本当、日本人は熱しやすく冷めやすいよね。今年、新作を出した大物洋楽アーティストの中で日本で知名度が高いアーティストといえば、レディー・ガガテイラー・スウィフトアリアナ・グランデといった辺りが挙げられると思う。いずれのアーティストも今年、全米ナンバー1ヒットを放っている。でも、日本ではかつてあれだけ邦楽しか普段聞かないような人にも支持されていたのに、今では「洋楽にしては売れている方だよね」くらいの人気しかない状況だ。結局、洋楽アーティストのリリースのスパンというのは邦楽に比べると長いから、待っている間に別のアーティストに気移りしてしまうってことなんだろうね。

その辺のコントロールK-POPは本当にうまいと思う。前作から半年も経っていないのに“カムバック”と呼んで新曲のリリースをあおったりしているし、アルバムに新曲をつけてリパッケージ盤を出したりもするし、その間には日本語版もリリースするしで、何だかんだ言って常に楽曲を提供しているからね。

それと同じような状況が映画興行でも起きている。
アナと雪の女王」(日本公開2014年)は1作目は興収255億円を記録したが、「アナと雪の女王2」(2019年)は前作の過半数を何とか超えた133億円超となっている。「君の名は。」(2016年)は興収250億円を突破したが、同じ新海誠作品「天気の子」(2019年)は「アナ雪2」よりはもちこたえたが、それでも“前作”の6割には届いていない。つまり、年に1回映画館に行くかどうかという人って、数年も経てば、そのコンテンツに飽きてしまうってことなんだよね。そして、ここ数年、「アナ雪」や新海作品に飽きた人たちにとって、年に1回もしくは数回、映画館に行った時に見る作品となっていたのが「劇場版コナン」やディズニー名作アニメーションの実写映画化作品だったのではないかと思う。

前者では「名探偵コナン ゼロの執行人」(2018年)が興収91億円超、「名探偵コナン 紺青の拳」(2019年)が93億円超と100億円に迫る勢いを見せた。そして、後者では「美女と野獣」(2017年)が124億円。「アラジン」(2019年)が121億円超と100億円を突破している。
「劇場版コナン」は毎年新作が公開されていたし、ディズニーの実写化作品もここ何年か次から次へと新作が発表されていた。「アナ雪」の続編や新海作品みたいに待たされることがないから、いつの間にか、こちらの方にその座を奪われてしまったんだろうね。

でも、「コナン」は今年公開予定だった作品の公開を来年に延期してしまったし、ディズニーの実写化作品の新作「ムーラン」は配信オンリーになってしまった。だから、1年に1回しか映画館に行かないような人が見る作品が不足していたんだよね。こういう人たちってのは、深くハマる趣味も少ないから、緊急事態宣言下では時間つぶしでTVアニメ版の「鬼滅」を見ていた人も多い。だから、「そろそろ今年も映画館に行きたいな」と思っていた超絶グッドタイミングで「鬼滅」の劇場版が公開されたから、そういう人たちがワンサカ駆け付けたのだと思う。

 

そして、記録的大ヒット映画ってのは他の作品にそんなに興味を持たない人が、たまたま見た作品にハマり、リピーター化することによって成立しているケースも多いのではないかと思う。映画館に年間3回行っても鑑賞作品は全部同じみたいな人とか。

 

自分は基本的には同じ作品を映画館で2度見るなら、別の作品を見た方がいいって主義だから、リピーター気質って全く理解できないんだよな…。
映画ファンになればなるほど、見たいと思う作品は増えるから、同じ作品を見るなら別の作品を見たいって思うことの方が多いからね。

最初に見た時に上映ミスがあったとか、迷惑な客のせいで落ち着いて見られなかったといった場合。そして、コレは鑑賞回数にカウントすべきではないと思うが、最初の鑑賞時にオチてしまったとか、諸事情で途中退室したので改めて鑑賞するとかいうなら分かるけれどね。

これまでに興収200億円を突破した作品で複数回、スクリーンで見ているのってバージョン違いで鑑賞したケースのものばかりだからな…。
タイタニック」は初公開時のバージョンとリバイバル上映時の3Dバージョン。「アナ雪」は字幕版と吹替版。「君の名は。」は初公開版と主題歌を海外版に差し替えたバージョン。それぞれを見比べたいから複数回、スクリーンで見ただけだった。「千と千尋の神隠し」と「ハリー・ポッターと賢者の石」は1回ずつの鑑賞で終わっている。
個人的にはIMAXバージョンくらいではもう1回見ようとは思わないから、「鬼滅」をリピートすることは今のところないかな。

まぁ、映画館が座席指定・定員入替制になる前というか、中学生くらいの頃までは、2回続けて見るのがデフォルトだったんだけれどね。高校の頃からハシゴ鑑賞が増えて、続けて見なくなってしまった。例外的に名作のリバイバル上映だと何度もスクリーンで見ている作品もあるけれどね。「街の灯」とか「ローマの休日」とか。

 

とりあえず、映画マニアやアニメオタクがいくら“他の作品も見ろ。もっと面白い作品はある”と言っても、「劇場版 鬼滅」の興収はのびていくだろうし、仮に次の劇場版の公開まで3年以上の間隔があいたら、その次回作の興行成績は今作より大幅に落ちるのは確実ということかな。

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