自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

第62回 輝く!日本レコード大賞 優秀作品賞(大賞候補)発表

レコ大の大賞候補曲=優秀作品賞受賞曲(この言い方、いかにも日本的な馴れ合いで大嫌い。まぁ、日教組全盛期の全員主役・全員一等賞と同じ発想なんだろうな)、かつてないほどの低レベルだな…。

まぁ、コロナ禍でレコーディング活動にも制限が出ているからこじんまりとした曲しか作れないってのもあるのかな?

 

大賞候補曲(優秀賞受賞作品なんて言い方は大嫌いなのであえて候補もしくはノミネートと呼ばせていただく)10曲について、それぞれ、触れさせてもらいたい。

 

まずは、瑛人「香水」とDISH//の「猫〜THE FIRST TAKE ver.〜」。確かに若者を中心にストリーミング(日本ではサブスクという呼び方をされることが多いが個人的にはその呼び方は好きではないので、欧米で一般的に使われるストリーミングという呼び方をさせていただく)でヒットはしたし、この辺が受賞すれば、レコ大に対する裏取引とか老害たちによる審査みたいなイメージは払拭されるのだろうが、音楽マニアとして言わせてもらうと、こんな、昔からよくあるタイプの曲で満足できる日本の若者って、レベルが低くないか?と言いたくなる。

 

三浦大知「I'm Here」。これが一番ノミネートされたのが理解不能な楽曲。レコード会社や芸能事務所の力関係で入っているとしか思えない。

 

AKB48「離れていても」と乃木坂46の「世界中の隣人よ」。どちらもコロナ関連のチャリティとしてリリースした配信シングルだが、ほとんど話題にならなかった。やっぱり、秋元系アイドルのファンって握手会などの接触イベント目当てで、つまり、そのメンバーと接触したいからファンになっているだけで、楽曲に興味がない奴が多いんだなというのを改めて実感した。

と思ったが、乃木坂に関しては、この曲に続いてリリースされた「Route 246」が配信シングルであるにもかかわらず、Billboard JAPANのチャートでトップ10入りを果たした。通常のCDシングル表題曲に比べれば、ギリギリでトップ10入りというのは弱い数字だが、それでも、ヒットしたということは、ファンは勿論、ストリーミングでしか音楽を聞かない層にもアピールしたということなんだから、こちらでノミネートすべきではと思う。小室哲哉提供楽曲ということで普段、秋元系アイドルに興味を持っていないメディアやリスナーが話題にしたという部分は大いにあるとは思うが。サウンド的にもglobeの「Feel Like dance」まんまだしね…。

まぁ、本来ならCDシングル表題曲としてリリースした「しあわせの保護色」が古くさい曲調も含めてノミネート向きだと思うが、この曲のセンターのまいやんが卒業してしまったので、外したんだろうなという気はする。作品ではなく演出優先でノミネート作品を選ぶのって、おかしいでしょ!

AKBだって、今年唯一リリースしたCDシングルの表題曲である「失恋、ありがとう」でノミネートすればいいのに、OG投入でも話題にならなかった配信チャリティ・シングルを選ぶのだから意味不明。

もしかすると、コロナ関連の企画を授賞式で行うことを考えていて、それのためにAKBや乃木坂のノミネート曲は配信チャリティ・シングルにしたのか?どちらの曲にもOGが参加しているから、ステージでOGと共演なんてのも考えているのか?演出優先ではなく、作品優先でノミネートを決めろよって言いたい。前から、レコ大は授賞式に来ない人間はノミネートされないなんて言われたりしていたから、その可能性はあるかも。

 

純烈「愛をください〜Don't you cry〜」もノミネートされるのは意味不明だな。演歌・歌謡曲も実はアイドル同様に接触系イベントでCDを売っているジャンルだが、その中でも、純烈はその依存度が高いアーティストなわけだから、AKBや乃木坂同様に例年より活動が縮小されているはず。正直なところ、AKBも乃木坂も純烈も候補入りしなくて良かったのではとさえ思う。

同じ演歌・歌謡曲のアーティストでも氷川きよし「母」のノミネートは納得できる。歌詞の内容といい、賞レース向きだと思う。ただ、大賞となると、そこまで世間には知られていないよねとは思う。世間では、非演歌の活動に対する注目の方が強かったと思うしね。

 

そして、DA PUMP「Fantasista〜ファンタジスタ〜」のノミネートも理解不能。レコード会社や芸能事務所の力関係で選ばれているとしか思えない。2年前の「U.S.A.」はカバー曲ということで大賞は取れず、優秀賞受賞にとどまったが(大賞を与える気がないならノミネートすんなよ!単なる視聴率や話題作りのためだけのノミネートなんて失礼だ!)、コレは大賞を取るべきと久々に誰もが思う候補曲だったと思う。(同じく大賞を逃したAKBの「恋チュン」に通じるものがある)

去年の「P.A.R.T.Y.〜ユニバース・フェスティバル〜」も「U.S.A.」に迫るポテンシャルを持った楽曲だし、「仮面ライダー」曲だから幅広い層にアピールしていた。でも、今年の曲はほとんど知られていないでしょ。

 

ということで、納得のいくレコ大受賞曲となると、Little Glee Monsterの「足跡」かLiSAの「炎」になると思う。リトグリは去年の「ECHO」で受賞すべきだと思ったが、同じ、NHK絡みの楽曲であるFoorin「パプリカ」を受賞させた方が話題になると演出的に判断されてしまい、受賞は逃す結果となった。

今回の「足跡」もNHK絡みの楽曲ではあるが、おそらく、NHK的というのは受賞判断にはなっていないようだから、今回こそは取らせてあげてもいいのではという気もする。

ただ、去年の「パプリカ」受賞の流れから来ると「炎」なのかなという気もする。

何か、ノミネート発表の段階で叩かれた分、その中で一番、大衆が納得する楽曲に大賞を与えればいいでしょみたいな空気が去年はあった。今年のノミネートの顔ぶれを見ると去年より酷いから、尚更、“鬼滅の刃”ブームに便乗して「炎」に大賞を与えそうな気もする。

劇場版の放送権、そして、今後作られるかもしれないテレビシリーズ2期の放送権、そうしたものを手にしようと各局が鬼滅マンセーを行っていて、鬼滅の映画を見た人によって、コロナの感染が拡大しているという事実に一切触れないから、「炎」のレコ大受賞で貢献アピールする可能性は高いかもしれないな。

 

でも、この曲って、80年代から90年代初頭のAORとか産業ロック、HR/HMアーティストのパワー・バラッドそのものって感じだよね。一番近いのは、デイヴィッド・フォスターがプロデュースしていた時代のシカゴかな。

LiSAの歌声が松田聖子を思い浮かべると主張する人がいたけれど、多分、それって、デイヴィッド・フォスターがプロデュースした「抱いて…」を思い浮かべているんだと思う。何か似ているしね。

あと、90年代末から00年代初頭に流行ったポップ・カントリー系のバラードにも近いかもしれない。フェイス・ヒルの「ブリーズ」とか、あの辺のやつね。

 

まぁ、リトグリには熱心なファン以上にアンチが多いから、LiSAの大賞ってのが一番批判は少ないのかな。

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