自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

君は彼方(ネタバレしないと批判できない)

池袋を舞台にしたアニメ映画ということで、どうせならご当地で見ようなんて気を起こしたわけではなく、たまたま、自分が他作品とハシゴするスケジュールの都合が良かっただけなのだが、結果として、作中にも登場するTOHOシネマズ池袋で本作を見ることになった。

TOHOシネマズ池袋は“アニメの聖地・池袋”にあるアニメファンを意識した映画館という触れ込みではあるが、この映画館って、本当にアニメファンのことを理解しているのだろうかと疑問に思うことが多いんだよね。

まず、ロビーが狭い!基本、アニオタって列を作るのが好きなんだよね。しかも、アニオタでない人間の視点から見ると何か説明の付けようのない独特な列の作り方で列を作る。基本、列を作る必要のないところでも、自分たちのイベント現場のルールで列を作ってしまう。今年はないけれど、コミケ開催時の新橋駅なんて、一般人から見たらおかしな列ができているからね…。

それと同様にアニメ映画が上映されているシネコンでも、アニメ映画以外の作品も上映されているにもかかわらず、独特なフォームの列を作ってしまう。だから、TOHOシネマズ池袋の狭いロビーではあっという間に居場所がなくなってしまうんだよね。当然、入場するまでの時間もかかってしまう。

 

それから、トイレも狭い。そして、男子トイレの大便器の数が少ない。男はあまり大便器を利用しないだろうというのは、非オタの発想。

長時間列に並んでいるためにたまっている排泄物の量が多くなっているのか、それとも、世間からバカにされる人種なので他人に自分の性器を見られたくないという人が多いのか、理由は知らないが、オタク向けの映画を上映している映画館や、オタク向けのコンサートを開催している会場では男子トイレの大便器を待つ行列ができるのは当たり前のことなんだよね。それを知らないで、わずかな数の大便器しか用意せず、アニメファンのための映画館を名乗るなんて、いい加減にしろと言いたい。

 

で、そんなTOHOシネマズ池袋で本作を見た感想としては、よくこんな内容で池袋や豊島区の関係者は協力する気になったよねって感じかな…。

 

全然、池袋の話じゃないんだよね…。

上映開始間もなくは、モブキャラや背景の草木も結構動いていて、日本のアニメにしては珍しく動きがいいじゃん!って思ったが、主人公たちが池袋周辺をデートするようになって以降は止め画だらけになってしまった…。しかも、この主人公たち、池袋を出て何とか岬に行こうとか言い出したやがった…。もう、池袋も豊島区も関係ないじゃん!その後、テンプレ的に池袋駅前の風景は何度か出てくるけれど、本筋はそれ以外のシチュエーションが目立ち、明らかに池袋周辺ではない河川の風景とともに花火大会の様子が描かれるし、クライマックスはまた海辺の話になってしまっている…。自分が池袋や豊島区の関係者だったら、脚本なりなんなりを読んだ段階で、こんな内容だったらタイアップはOKしないと思う。騙されているんじゃないのか?

 

そういえば、この作品の製作委員会に名を連ねているアジアピクチャーズの面接に行ったことがあるんだけれど、なかなか、胡散臭い会社だったな…。

金曜日の深夜に“希望面接日時を選んで返答してください”ってメールが来たんだけれど、先方の指定した日程って日曜日の午前中しかないんだよね…。選ぶも何もないし、そもそも、金曜日の深夜に日曜日の朝の面接に来いってのは、どう考えてもパワハラ企業のやることだしね。

でも、まぁ、たまたま、その日は仕事も休みだったし、試しに覗いてみるか?って感じで面接に行ってみたんだけれど、面接とは名ばかりで、実質はグループ面接の形式をとった社長の独演会だった。一応、社長から参加者に質問したり、こちらから質問したりってのもあったけれど、要はこれから業務拡大し、それに伴い社員の給料を上げます。そのために個々の社員による評価制度を導入していますというものだった。でも、自分以外の社員を評価する際に、その社員にボーナスを自分が与えるみたいな、よく分からないシステムだった。結局、他の社員からボーナスをもらえる場合もあるが、他の社員にあげなくてはいけないことの方が多いってことでしょ?何かネズミ講とまでは言わなくても、新興宗教みたいなお布施システムだなと思ったりもした。

で、この「君は彼方」って作品、見たことないけれど新興宗教団体が作るアニメ映画っぽい雰囲気がするんだよね。

主役の声を松本穂香が担当し、小倉唯早見沙織といった人気声優や、大谷育江山寺宏一といったベテラン声優も出演し、竹中直人夏木マリなどの非本業声優にも豪華キャストが参加しているので、幸福の科学作品のようなまがいもの感は何とか免れてはいるけれどね…。

 

ボイスキャストといえば、松本穂香は実写作品でも毎回のように違うイメージを見せてくれるので、その演技力を発揮し、本作でも好演はしていたと思う。他の非本業声優の演技はアニオタ得意の批判の対象になりそうな演技だったが、松本穂香は健闘していたと思う。ただ、終盤の謎の絶叫演技は意味不明だった。その辺が新興宗教映画っぽいって思われる要因の一つかな…。まぁ、80年代の角川アニメ映画「幻魔大戦」も豪華キャストによる新興宗教っぽい映画だったし、去年公開の「あした世界が終わるとしても」も、内田真礼悠木碧水瀬いのりといった人気声優出演作品なのに、そういうニオイがしたから、まぁ、アニメ映画ではよくあることなんだけれどね。

 

そして、何かに似ているといえば、本当、色んな他作品のシーンや設定をつぎはぎしたような感じで呆れるばかりだった…。

 

様々なデートスポットをメインの2人が訪れるシーンが止め画の連続で表現されるのは「あした世界が終わるとしても」と同じ演出。あれは新宿の話だったが。

 

主人公が上空から落ちてくる描写は「天気の子」。

 

空飛ぶペンギンは「ペンギン・ハイウェイ」。

 

クジラの描写は「海獣の子供」かな?

 

海上を列車が走る光景は、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」に近いかなと個人的には思ったが、人によっては、「千と千尋の神隠し」とか「ワンピース」なんかを思い浮かべるかもしれないなと思った。

 

そして、異世界から抜け出そうともがくストーリー展開は「バースデー・ワンダーランド」というか、その元ネタでもある「ふしぎの国のアリス」だし、マスコットキャラ的な人物や謎の人物と一緒に奮闘する話なんて、それこそ数多の魔法少女ものや、戦隊少女系アニメでおなじみの設定だ。

 

自分のペットが人間化したキャラクターになるなんてのも、「泣きたい私は猫をかぶる」といった最近の作品に限らず、よく使われる設定。

 

そして、主人公が忘れている何かを思い出さなければ異世界を脱出できないなんてストーリーもよくあるパターン。でも、本作に関しては主人公が思い出さなければいけないことなんて、誰が見ても分かるんだよ。そして、終盤のその言葉を発するシーンの台詞が消されているという演出も意味不明!同じ、なかなか現実世界に戻れない系の話でも、「エンドレスエイト」の方がまだマシと思えるほどの酷さだ。

 

それから、敵が蜘蛛姿になって登場するのは、誰もが「鬼滅の刃」を思い浮かべるしね。

 

そして、パクられたのは国産アニメだけではない。唐突にミュージカル・シーンが登場するんだけれど、そこで歌われている楽曲の自己啓発ソングっぽい歌詞がもろ、「アナと雪の女王」。

1作目の主題歌“レット・イット・ゴー”と2作目の主題歌“イントゥ・ジ・アンノウン”を混ぜて、10分の1くらいに薄めたような、もろパクリの内容だった。

 

さらには、アニメだけではなく実写作品のパクリもあった。自分が無視されていたのは実は自分が死んでいることに気付いていなかったからだと分かるシーンがあるが、それって、「シックス・センス」だろ!いまだに、「シックス・センス」をパクる作品があるなんて驚きもいいところ!しかも、「シックス・センス」は脚本、演出、撮影、編集、演技の巧さで主人公同様に観客も主人公が死んでいることに気付かなかったけれど、本作は誰が見ても主人公が死んでいる(というか死にかけている)のは分かっているしね。そもそも、主人公は現世と来世の狭間に迷い込んだって設定なんだから、そりゃ完全に死んではいないかもしれないが、死にかけているのは明白なんだし、それなのに自分は死んでいないって思っているのも意味不明。

 

とりあえず、本作はクソ映画愛好家にとっては、たまらない作品ってことかな。この機会を逃すと、今後鑑賞するチャンスが訪れないかもしれないしね。まぁ、見れば、「やっぱり、クソだった」と思うこと間違いなしではあるが。

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