自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie

いやぁ、久々に肩身の狭い思いで鑑賞する作品になったな…。男の観客なんてカップルで来ているのを除けば、ほとんどいないし、それどころか、女性を含めても30代以上はほとんどいない。一人で見に来ている野郎なんて、痴漢目当ての不審者扱いされているんじゃないかって、ヒヤヒヤしながら見るはめになった。実際、入場の際も劇場スタッフが「入る部屋間違えていないか?」みたいな視線でこちらを見ていたしね。

 

それはさておき、ストレート・プレイだろうと、ミュージカルだろうと、歌舞伎だろうと、演劇・舞台に行くと、観客は圧倒的に女性が占めていることが多い。

ストレート・プレイやミュージカルなら休憩時間を含めて3時間前後。歌舞伎なら休憩時間を含めて4時間前後と時間を取られる。しかも、会場も日時も限定的なので、映画のようにふらっと、“今日は休みになったから見に行こう”みたいなことは難しい。男はどうしても、仕事優先になりがちなので、演劇・舞台の鑑賞予定が立てにくいというのはあるのかもしれない。

 

その一方で、日本の女性が演劇・舞台に親しむ習慣が身についているのは、もしかしたら、ジャニーズのおかげなのかもしれないなと思った。ジャニーズのタレント出演の演劇・舞台は、ストレート・プレイやミュージカルのみならず、歌舞伎と名乗る作品まであるしね。そして、ジャニーズ出演舞台というのは、男の観客にとっては、ほとんど禁断の世界。まず、チケットは取れないし、取れたとしても観客のほとんどはジャニオタの女性だから、肩身の狭い思いをすることになる。なので、男は女性のようにジャニーズ出演舞台で若いうちに素地を固めるって経験がないから、演劇・舞台に対して敷居が高く感じるのかもしれないな。(敷居が高いって言葉、一般が思っている意味は本当は違うんだっけ?まぁ、ここは一般が思っている意味ってことで)

 

それにしても、この「滝沢歌舞伎」もそうだし、「ナウシカ」や「ワンピース」などを歌舞伎化したものもそうだけれど、こういう作品を見ると、“コレって歌舞伎なの?果たして歌舞伎って何?”って思うことがある。でも、よく考えたら“歌舞伎”って字面通り、歌と舞の伎(技)さえ披露されていれば歌舞伎なんだよね。まぁ、見得を切るとかのお約束ごとさえ、ある程度守っていれば、とりあえず歌舞伎なんじゃないかなという気がする。つまり、本来の日本的な考えでいけば、ミュージカルもオペラもオペレッタも歌舞伎なのかもしれない。

 

ところで、本作は前半は前衛芸術のようなイメージの演舞を披露したり、歌舞伎でよく扱われる題材を演じたりしつつ、合間にSnow Manの歌唱がはさまる構成で、後半はロケセットでの撮影からクライマックスは舞台収録に変わるという構成の時代劇(突然、メタ構造になったり、時代劇の世界ではないはずのマイクやカメラが出てきたりするのは演劇的だが)という二部構成になっているのは、演歌歌手などが演劇と歌謡ショーの二部構成のステージをやるようなものなのだろうか?

 

そういえば、滝沢歌舞伎といえば、新橋演舞場にちなんで開催された滝沢演舞城で、演舞の舞の字を無理矢理分解して、演タッキーって読ませていたのあったよな…。

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