自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

少年寅次郎スペシャル

去年のシリーズ、そして今回のスペシャル前後編。全てのエピソードで涙を流してしまった…。本当泣けるな…。まぁ、自分が下町民ということもあるのだろうが。

 

そして、下町の描写といえば、去年のシリーズでは江戸川がどこの山村を流れる川だよ?みたいな風景になっていたが、今回はきちんと鉄橋を列車が走る風景になっていた。まぁ、夜のシーンなので現在の江戸川で撮影しても昭和の風景にごまかすことができるという判断だったのかなという気はするが。

 

そういえば、本作の脚本家は岡田惠和だが、現在放送中の「姉ちゃんの恋人」は本当、酷い脚本だと思うが、本作や朝ドラの「ひよっこ」、映画「いちごの唄」なんてあたりはよく出来ている脚本なんだよな。その一方で映画「世界から猫が消えたなら」とか「姉ちゃんの恋人」みたいに酷いのもある。

前者のようなノスタルジックなものは得意だが、現在進行形のものは苦手ってことなのかな?まぁ、「姉ちゃんの恋人」は令和2年の話でも、パラレル・ワールドみたいなものだから純粋な現在進行形の話ではないかもしれないが。というか、「世界から猫が消えたなら」もノスタルジックな要素はあったか…。単純に出来にムラがあるってことなのかな?

 

ただ、今回のスペシャル前後編、絶賛できる点ばかりかというとそうでもないんだよな。シリーズの主要キャラであった母ちゃん、父ちゃんを出さなくてはいけない。でも、母ちゃんはシリーズ中に死んでいるし、父ちゃんも今回のスペシャルで死んでいる。だから、どうしても構成がシリーズで描かれたシーンの回想(再登場)、もしくはシリーズで描かれなかった場面をキャラクターたちが回想するというものになってしまっている。今回はスペシャルということで、また、井上真央演じる母ちゃんをもう一度見たいという視聴者の声に応える必要があったので仕方ないとは思うが、今後、また続きがあるとしたら同じ構成はやめた方がいいとは思うかな。

 

とはいえ、生きているキャラクターの再登場は今後も続けていくべきだとは思うけれどね。今回のスペシャルの前編に登場した森七菜は、そういえば、シリーズに出ていたの彼女だったなと改めて思い出させてくれるとともに、出演作品ごとに違うイメージ、違う演技を見せてくれる彼女はアイドル的人気のある若手女優の中でもピカイチの演技力ではないかと再認識させてくれたしね。

 

それから、チビさくらが、映画「男はつらいよ」1作目のめちゃくちゃ可愛いさくらをそのまま小さくした感じで、本当によく出来たキャスティングだと思った。次回作があるなら、もう少し成長した寅次郎とさくらを見たいという気もするかな。

 

ところで、本作というか、「男はつらいよ」の世界では「兄妹の絆」がテーマの一つとなっているが(主題歌の歌詞もそうだしね)、どうも「兄妹の絆」ってしっくりこないんだよね…。

記録的大ヒットとなっている「鬼滅の刃」も「兄妹の絆」をうたっているし、妹萌えのアニメやコミックなんてのは無数にある。さらに、AVでは兄妹の近親相姦ものが多数作られている。

でも、こうした“兄妹もの”って妹がいない男の幻想にしか思えないんだよね。実際に妹がいる男は、アニメ好きでも妹萌えの作品にはリアリティがないって言うしね。

 

きょうだいの関係には色々あるが、兄弟は“きょうだい”と読むし、姉妹は“しまい”と読む。異なる性別の組み合わせでも姉弟は“してい”と読む。

でも、兄妹の読み方って、ほとんどの人が知らないでしょ?便宜上、“きょうだい”って読んでいる場合がほとんどでしょ?どうやら、“けいまい”って読むらしいが、そんなのほとんどの人が知らないし、まず、ニュースでそんな読み方を聞くことはないよね。それくらい、兄と妹の関係ってのは、兄弟や姉妹、姉弟の関係より希薄なんだと思う。

 

兄から見れば、妹ほどムカつく存在はないし、妹から見れば、兄ほどウザい存在はないと思うんだよね。だから、大人になって別々の生活になると、兄妹ってのは、兄弟や姉妹、姉弟ほど繋がりがなくなってしまうんだよね。

まぁ、よく女性は男より精神年齢が数歳上と言われるから、兄は年下の妹にバカにされるのが腹立つし、妹は年上の兄がバカに見えるんだろうね。

 

だから、兄をバカにする妹に腹が立ってレイプするみたいなAVは言い方は悪いがリアリティはあるのかもしれないな。犯罪行為は良くないけれどね。

 

なので、「兄妹の絆」が存在すること自体が貴重なことだから、そういうのは特殊なケースとして映画やドラマ、アニメ、小説、コミック、ゲーム、AVなどの創作物ではテーマとして扱われやすいのかもしれないな…。

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