自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

FUNAN フナン

去年に引き続き、今年も夏の終わりから年末にかけて海外アニメーション映画の公開が相次いだ。
ここでいう海外アニメーション映画というのは、ハリウッドのメジャー・スタジオの配給網に乗って拡大公開されるディズニー・ピクサーやドリームワークス、イルミネーションなどといった米国の大手スタジオの作品を除いたもののことである。
ただ、それなりの規模で全米公開される作品でも、ストップ・モーション・アニメーションのライカ(米国)やクレイ・アニメーションのアードマン(英国)のものはアート性の高さから、海外アニメーション映画のカテゴリーに含めたいと思う。

 

日本のアニメオタクの中には、深夜アニメの劇場版と、あとはせいぜい、「ワンピース」、「ドラゴンボール」、「コナン」くらいしか見ないという人が多い。アート性の高い海外アニメーションどころか、ディズニー・ピクサーすら見ない。それどころか、ジブリ細田、新海の作品だって、テレビ放送された時に見るくらい。それ以外の国産の劇場オリジナルのアニメ映画は本業ではない声優がメインキャストを務めているからという理由で見ようともしない。

 

逆に海外アニメーション映画を絶賛する勢力には、ディズニー・ピクサーやドリームワークス、イルミネーションなどのハリウッド系を見下し、国産の深夜アニメの劇場版などは映画扱いすらしない人も多い。

 

また、マニア属性の少ない一般の映画ファンにとっては、アニメ映画といえば、国産でいえば、ジブリ細田、新海の作品と、深夜アニメを除く(「鬼滅」のような例外はあるが)テレビアニメの劇場版(「ワンピ」や「コナン」など、ファミリー層だと、「ドラ」とか「ポケモン」、「プリキュア」など)、そして、海外作品ではディズニー・ピクサー、イルミネーション。この程度しか興味の対象ではない。

 

なので、映画ならなんでも見る。アニメならなんでも見るといったような層以外は、俯瞰的に今の世界のアニメーション映画事情を把握できていないのが現状であったりもする。今年のアニメ映画シーンを「鬼滅」だけでしか語れず、こうした良作と出合う機会がない人が多いのは、非常に勿体ないなという気持ちでいっぱいだ。

 

そんな今年の夏の終わりから年末にかけて公開された海外アニメーション映画には以下のような作品があった。

「マロナの幻想的な物語り」
「新しい街 ヴィル・ヌーヴ」
「ウルフウォーカー」
「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来」
ミッシング・リンク 」英国紳士と秘密の相棒」
「Away」
「FUNAN フナン」

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この中で、海外アニメーション映画好き以外にも広がったのは、去年、字幕版で限定公開された作品を日本語吹替版で今年、全国公開した「羅小黒戦記」くらいだろうか。ディズニー・ピクサー、ドリームワークス、イルミネーションなどの大手作品ではない海外アニメーション映画でありながら、日本の観客動員数ランキングのトップ10内に入るという快挙を成し遂げてしまったからね。

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映画やアニメに関する知識がないネトウヨはこの作品が中国製ということで、“中共の洗脳作戦。誰も見ないのに話題作とゴリ推ししている”なんてホザいていたが、それはあんたらが無知なだけだよって言いたい。
アニオタには自民党政権を支持し、ネトウヨと親和性の高い思想を持つ者も多いが、日本のアニメが中国や韓国のスタジオなしでは成立しないのは知っているから、中国や韓国のアニメを全否定する人間なんて少ない。
つまり、「羅小黒戦記」を叩いている連中は映画やアニメに関する知識がないのに、ただ、ウソを言い回っているだけに過ぎないんだよね。

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個人的には、上記作品の中では「ウルフウォーカー」が一番、出来が良いとは思ったかな。さすが、傑作揃いのカートゥーンサルーンの作品といった感じだった。実際、今年度の映画賞レースでも、いくつかの映画賞でアニメーション部門で受賞しているしね。

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あと、台詞なしの「Away」は印象が鮮烈だった。そんな作品にノリノリの邦楽曲をかける日本版エンディングなんてものを付けて、余韻がないのが余韻という本作の良いところを台無しにしてしまった日本の配給会社に対しては怒りしか感じないが。

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そして、今回鑑賞したのが「フナン」。
監督はアジア系とはいえ、製作国としてはフランスが頭に来ているだけあって、いかにも欧米人が好きそうなオリエンタリズム(というか中華風)の音楽が鳴っているのは気になった。
でも、米国なら実写作品として作るような内容の作品をアニメーションで描くというのは日本とも共通しているなと思った。

 

それにしても、本作を見ると左翼思想は危険だという思いしか抱けなくなってしまう。
本作の題材となっているクメール・ルージュというのは、世間一般的には独裁政権というイメージだと思う。
そして、日本でも欧米でもクメール・ルージュを非人道的と批判する人の多くは自国の保守政権に対しても独裁的と批判する。
日本でいえば自民党、米国でいえば共和党に対して批判的なスタンスの人たちほど、そうした独裁政権に対して批判的な姿勢を見せている。

 

でも、よく考えると、クメール・ルージュって左翼だよね。つまり、自民党共和党を批判する人たちと立場は近いってことでは?

確かに左翼やリベラル、パヨクと呼ばれる人って、清廉潔白なものを求める割には自分たちは特権階級だと思い込み、一般市民を見下しているのが多いし(そもそも、野党の候補って金持ちや有名人じゃないとなれないの多いよね)、平等を主張する割にはパワハラやセクハラを行う者も多い。そして、自分たちの理想と1ミリでもずれていたら、ネトウヨ扱いして攻撃してくるのも多い。たとえば、自民党政権を批判している人間でも「改憲は必要」と主張するとネトウヨ扱いしてくる。「自民党が嫌いなネトウヨなんていねぇよ!」って言いたくなるが、彼等の思考ではそうなるんだよな…。それから、平和を訴えるくせに暴力的なのもそう。Black Lives Matter運動における抗議デモと称した事実上の略奪行為なんて、ただの暴力だしね。

 

そういう、様々な左翼、リベラル、パヨクと呼ばれる人たちの行動を思い浮かべてしまい、もしかしたら、この作品は欧米のエンタメ・アート界で蔓延していた反トランプ的なものへのアンチテーゼなのではないか?あるいは、左翼思想、リベラル思想を嫌いになるためのプロパガンダなのではないか?そんな作品に思えて仕方なかった。

この映画を見たら、立民や国民、れいわ、共産よりも自民でいいや。民主党より共和党でいいやって思えてきてしまうもんな…。

まぁ、そういうことを言うと、日本だろうと米国だろうと左寄りの人たちは批判してくるんだろうが…。