自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

2020年Myベスト映画

今年は新型コロナウイルスの影響で都内で映画館の営業が長期にわたって中止されるというかつてない事態となった。

2011年の東日本大震災の時や去年の台風19号の時でさえ、都内で映画館の営業が休止されたのはわすかな日数だけだった。

 

しかし、今年はかつてないほどの休業期間があった。

政府が2月下旬にイベントの中止などを呼びかけると、2月下旬から3月中旬にかけてはミニシアターや名画座が営業を休止した。

そして、東京都が3月下旬に外出自粛を呼びかけると、3月下旬から4月上旬にかけて、シネコンも含むほとんどの映画館が土日の営業を休止した。

さらに、4月に緊急事態宣言が出されると、ほとんどの映画館で4月上旬から5月下旬まで。TOHOシネマズでは6月頭まで営業が休止された。

 

数ヵ月もの間、映画館がやっていないなんて人生初めての経験だった。戦時中でもここまでの長期休業なんてないという声もあったほどの異常事態だった。

 

2ヵ月間も全く映画館へ行かなかった時期なんて、少なくとも、社会人になってからはなかったしね。だから、映画館で見る新作映画の年間鑑賞本数は大幅に減るのではないかと思っていた。

自分は年間の劇場での新作映画鑑賞本数最低100本をノルマにしているが、東日本大震災の年は、余震が多く、6階より上のフロアーにある映画館には行きたくないと避けていた時期もあったので(上映中に揺れること結構あったな…)、鑑賞本数が3桁には届かなかった。

 

今年もそうなるんだろなと思っていたが、まさかの141本だった。

去年の166本よりは大幅に減ったが、2年前の134本は上回るというまさかの結果になった。緊急事態宣言解除後、6月は様子見でスローペースでの再開だったが、7月以降一気に加速したようだ…。

 

ちなみに新作映画の定義は以下の通りとしている。

 

●2020年に日本の映画館で初めて一般公開された作品

※ただし、2019年までに先行上映や試写会、映画祭、イベントなどで鑑賞済みのものを2020年の一般公開で改めて見た場合はカウントしない

 

●2019年公開作品でも2020年1月時点で続映中の作品を2020年になって初めて鑑賞した場合は新作の鑑賞本数にカウントする

※2019年内に上映が一旦終了し、年明け後に再上映された作品はカウントしない

 

●2020年時点で一般公開されていない作品でも、先行公開や試写会、映画祭、イベントなどで鑑賞した作品は新作としてカウントする

 

●オリジナル版の初公開が2020年、2019年以前を問わずディレクターズ・カットなどの別バージョンはオリジナル版の鑑賞の有無を問わずカウントしない

 

●短編・中編作品は、長編や中編の併映作品として上映されたものはカウントしない

※短編・中編が単独で公開された場合は1本としてカウント。短編などを複数まとめて公開した場合はプログラム全体で1本とカウント

 

●テレビ作品として最初に世に出た作品は、テレビ版のままでも、手を加えたものでも、総集編でも劇場初公開の場合は新作としてカウント

 

●映画として製作されたものの、配信やソフト、テレビ放送で日本初紹介となった作品は、その時期が2020年、2019年以前を問わず、その後、劇場公開されれば新作映画としてカウント

※配信やソフト、テレビ放送での鑑賞の有無は問わない

 

そして、鑑賞作品を洋画・邦画にわけて見てみると、洋画50本、邦画91本と圧倒的に邦画優位となった。

 

2015年に洋画68本、邦画87本となり、小学生の時以来、超久々に年間の邦画の鑑賞本数が洋画を上回った。

以降、2016年が洋画80本、邦画89本。

2017年が洋画62本、邦画67本。

2018年が洋画62本、邦画72本。

2019年が洋画74本、邦画92本となり、邦画優位が続いた。

 

自分は海外文化かぶれ、特に米国かぶれだと自認している。そんな自分でさえ、邦画の鑑賞本数が増えてしまった理由としては国産アニメのイベント上映の増加が一番大きいと思う。そして、それと同時に長引く洋画不振により洋画の上映館、上映回数が減らされ、しかも、1週目で好成績をあげていないと2週目以降に見られる劇場がさらに減り、上映回数も削減されるという状況になっていることも影響していると思う。

 

それでも今年のように圧倒的に邦画の比率が高まることはなかった。今年は大雑把に言ってしまえば、鑑賞作品の3分の2近くが邦画になっている。

ここまでの邦画優位は、アニメ映画やアイドル映画、ファミリー向け映画など国産作品以外の情報がなかなか入手できなかった小学5年生くらいの頃までのレベルだ。もっとも、この頃の邦画比率は限りなく100%に近く、洋画を映画館で鑑賞するなんて年に1本あるかないかといったレベルだったが。

 

今年が圧倒的邦画優位となった要因で一番大きいのは、欧米の新型コロナウイルスの感染状況が東アジアとは比べものにならないほど甚大で、ハリウッド映画の公開延期が相次いだり、劇場公開が見送られて配信作品に変更になったりというのが多かったことだと思う。

また、NYやLAなどを除いた地域で映画館の営業が再開されてから“全米”公開された作品でも、日本向けのプロモーションがほとんどできないことから、公開予定が立たなかったり、日本劇場公開を見送りソフト化されてしまったりした作品も多い。

そして、10月後半以降は、日本の興行記録を塗り替えた「鬼滅の刃」の上映に多くのスクリーンが使われることになり、洋画のみならず他の邦画も上映回数が減ってしまった。

こうした諸事情が合わさった結果が、この異常な邦画優位になった理由だと思う。

 

そんな2020年のMyベスト・ムービーは以下の通り。

 

《洋画トップ5》

①リチャード・ジュエル

②カセットテープ・ダイアリーズ

③フォードvsフェラーリ

ジョジョ・ラビット

⑤1917 命をかけた伝令

 

takaoharada.hatenablog.com

 

ハリウッド映画を中心とした洋画の供給不足の影響もあり、上半期のトップ5から更新されたのは「カセットテープ・ダイアリーズ」のみ。自分がブルース・スプリングスティーンを好きというのもあるが(来日公演って半永久的に無理そうだな…)、本作のボス好きである主人公が自分と同じ年の生まれというのも共感できた理由かな。まぁ、我々世代は作品の舞台となっている1987年のヒット曲で本作に使われていたペット・ショップ・ボーイズ「哀しみの天使」は大好きだと思うよ。

 

 《邦画トップ5》

①アルプススタンドのはしの方

ジョゼと虎と魚たち

③MOTHER マザー

④青くて痛くて脆い

思い、思われ、ふり、ふられ(実写版)

 

こちらは全て下半期公開作品に更新されてしまった。ぶっちゃけ、上半期はパッとしなかったからね。そして、いかに、緊急事態宣言が解除されてから、邦画の供給が増えたかが分かる。外出自粛要請や緊急事態宣言により公開が下半期に延期された作品、元々、下半期に公開予定だった作品。それらが同時に公開されるから追いかけきれなかった。そのせいで、上映回数の少ない作品も多かったしね。

 

①は間違いなく今年を代表する傑作。予算がないから、ロケ地となった球場はどう見ても甲子園には見えず、行われている試合も全国高等学校野球選手権大会ではなく、都道府県大会にしか見えない。普段だったら、そんな映画は酷評するが、我々、スクール・カースト下層経験者なら共感せずにはいられない要素満載の作品だった。それにしても、洋画は巨匠の作品や、賞レースを賑わせた作品などベタベタな選択になるのに、邦画はベタベタな路線にはならないんだろうか?洋画を見る時の自分と邦画を見る時の自分は別人格なのか?

 

②は泣けた!まさか大晦日に鑑賞した作品をここまで上位にもってくることになるとは思わなかった。アニメオンリーではダントツの今年のトップ!

 

③は長澤まちゃみの演技に感心した。まぁ、まちゃみが演じた母親にも、母親に虐待された上に犯罪にまで手を染めさせられるのに母親を愛している息子にも、全く共感できず、後味の悪さといったらなかったが。

 

④は何故か世間では不評なので救いの手をさしのべる気持ちでトップ5入りさせた。この作品って、学園生活を送っていた時代にいわゆるスクール・カーストで上位や中間層にいた人間と、下層にいた人間で全く評価が異なると思うんだよね。つまらないとか理解できないと言っている人は前者。自分のように評価している人は後者。自分が数少ない仲間とはじめたことなのに、いつの間にか、自分は蚊帳の外になり、仲間の方だけ存在が大きくなっていく。あるいは、仲良くしていた友人との間に別の人物が入ってきて、気付いたら、友人はその人物の方にばかり目が行ってしまい、自分の存在意義がなくなってしまう。そんな経験をしたことがある人間なら共感しまくりだよね。アニメ「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」が百合展開しかも鬱展開と言われたのも、そういう関係が背景にあったしね。

 

⑤はいわゆる、“キラキラ映画”の最高傑作だと思う。まぁ、ここ何年か“キラキラ映画”はかつてほどのヒットを放てなくなったし、今年はコロナ禍で一層、その傾向が強まったけれどね。ただ、この実写版を見た時点では、もっと上位に入ってもおかしくないほどの評価だったんだけれど、原作に近い描写のアニメ映画版を見て、実写版とは多少、設定が違うことに気づいたので、評価を下げざるを得なくなってしまった。

 

《ワースト映画》

①私をくいとめて

②Reframe THEATER EXPERIENCE with you

ヲタクに恋は難しい

④シグナル100

ワンダーウーマン1984

 

 

まぁ、邦画の鑑賞本数(供給量)が多いからクソ映画も邦画が多くなるのは当然だよね。

 

①はやたらとネット上ではマンセーの声が相次いでいるので、それが納得できないことから問題提起の意味も込めてワースト作品に選んだ。結局、この映画を絶賛している人ってのは、フェミ的な主張が100%正義と思っている人か、のんの信者だと思うんだよね。そういう人たちが、ネット上で高評価コメントをしているだけ。それに騙されて傑作だと思い込んではダメだよ!

 

②は①がなければ、ダントツで今年のクソ映画に認定するつもりだった。これもPerfumeのファンが作品を批判してはいけないとの思いからマンセーしているが、どう見てもダメダメな作品。常にステージの全体を見せたいというのは演出側のマスターベーションでしかない。音楽映画として見せるにしろ、ライブDVDとして見せるにしろ、そんなのでは成立しない。本作に関わった人は舞台に関してはプロかもしれないが、映像に関してはど素人と言わざるを得ない。

 

③はまぁ、映画好きなら福田雄一映画は酷評するよねって感じかな。テレビの福田作品は面白いと思うし、今夏放送されたドラマ「親バカ青春白書」なんて結構好きだったんだけれどね。映画でも「銀魂」シリーズとか「薔薇色のブー子」とかは個人的には評価している。でも、多くの福田映画はテレビドラマでやっているほとんどコントの演技を延々とやっているだけなんだよね。そりゃ、映画としてはつまらないよ。そして、本作が何よりも許せないのは、自分たちはヲタクの側に立っているアピールをしておきながら、実際はバカにしていることなんだよね。それどころかヲタクの現状すらきちんと勉強せず、遥か昔のステレオタイプ的なヲタク像からアップデートされていない。まぁ、ヲタク気質が少しでもある人間なら腹立つよね!

 

④はもうツッコミどころだらけ!それにしても、コロナ禍で映画館の営業が長期にわたって休止された時期があるにもかかわらず、今年、ハシカン出演映画を劇場で5本も見ているって、どういうことだ?まぁ、その5本のうちできちんとした映画になっていたのは「弱虫ペダル」だけだったが。

 

⑤も①と同様。絶賛しているのはフェミ的主張に少しも疑問を持っていない人だけだろうね。本当、つまらなかった。あと、いい加減な上映をしたグランドシネマサンシャイン池袋に対する抗議の意味も込めてワースト5本に選んだ。IMAX上映などで人気だからってあぐらかいてんじゃねぇよ!

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