自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

(ドリパス)『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』特別上映会【最新字幕版】

 

やっと、字幕版で見ることができた。先に見ていた吹替版と見比べてみた正直な感想を言うと、吹替版の方が面白かった。普段、原語版至上主義の自分がこんなことを言うのは滅多にない。字幕版と同じくらい吹替版も良いという言い方であれば、松たか子&神田沙也加の「アナ雪」シリーズがあるが、それはあくまでも、演技や歌唱力の話であり、本作に関しては単純に見て面白いと思ったのが吹替版の方だった。

アニメーションを中国語で見るという機会が少ないから、台詞の間とかテンポに慣れていないというのがあるのだろうか?

 

でも、会話のシーンは聞こえてくる音声は中国語だけれど、中国作品を見ているという感触はあまりしなかったんだよね。米国製アニメーション映画やミニシアター公開の欧州作品だったら、外国作品を見ているという意識が消えないが、本作では、そういうのは感じなかった。ぶっちゃけ、日本のアニメを見ている気分とそんなに違わなかった。ギャグのシーンになると崩した画風になるという日本のアニメでおなじみの演出もされていたから親近感があったのかな?

 

ただ、アクションシーンになると、中国(もしくは香港)の実写ファンタジー系作品を見ているような感覚にはなったかな。やっぱり、実写ではアクションとかファンタジーの分野は圧倒的に中華圏の映画の方が良く出来ているから、アニメでもそういう演出がされているんだろうなと思う。まぁ、冒頭の森の中のシーンがちょっと、ディズニーの「ターザン」っぽいかなと思ったりもしたけれど。

 

ところで、本作の吹替版が日本の観客動員数ランキングのトップ10に入っていた頃に、関連のニュースがネットに上がるたびに、ネトウヨが“中共の手先の反日マスコミがつまらない作品をゴリ推しし、洗脳しようとしている”みたいなアホなことをぬかしていたが、本当、ネトウヨって無知の塊だよねって思う。

アニオタとネトウヨって、思想的にはかぶっている人間も多いけれど、アニオタは中国アニメ業界を全面否定なんてしないからね。日本のアニメのクレジットを見れば分かる通り、中国人や韓国人がいなければ日本のアニメは完成しないからね。彼等を全面否定し、彼等を雇うなと言ったら、自分の見たいものが見られなくなるわけだしね。そして、そういう日本の下請け仕事をしていた人たちが実力をつけてくるのは当然といえば当然だから、頭ごなしに中国アニメ=反日なんて考えは起こさないしね。

 

そういえば、今回の字幕版はドリパス上映で見ることができた。吹替版の公開が発表されて以降、なかなか字幕版の上映機会がなく、ドリパス上映が実現しても、すぐにソールドアウトになっていたが、今回、やっと、チケットを手にすることができた。

しかし、緊急事態宣言が発令されたことにより、一部作品が公開延期になるなど上映作品不足が起こってしまい、ミニシアターなどでも字幕版が上映されるようになってしまった。

ドリパスのチケットは手数料も含めると2000円を超すから、通常の入場料金で見られるミニシアターなどでの再上映が行われていることには、ちょっとショックを受けてしまった。そのせいか、今回の上映、終映後に拍手などもなく盛り下がっていたようにも思えた。ドリパスはレアな作品の上映だから盛り上がるはずなのに、一般上映されている作品をドリパスで見てもねって感じだしね…。

 

それにしても、緊急事態宣言による作品不足で、ドリパス上映作品とか、名画座で上映されるような旧作をシネコンやミニシアターがかっさらっていき、ミニシアターで上映されるアート作品をシネコンがかっさらっていくってのは納得いかないよね。

結局、シネコン>(だいぶ減ったけれど)旧来型のロードショー館>ミニシアター>名画座>オフシアター上映という力関係は変わらないんだよね。だから、コロナ禍のような事態になれば、下層に行くほど厳しい運営状態になってしまう…。

そもそも、ミニシアターや名画座、オフシアターは「鬼滅の刃」を上映していないからね。そういう所で上映される作品まで力づくで奪っていくシネコンって、本当、野球でいうところの巨人みたいな存在だよね。

f:id:takaoharada:20210131093920j:plain