自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

哀愁しんでれら(ネタバレ含む)

2016年クリエイター発掘コンペティションの受賞作なのに、今頃になって映画化されたのって何故なんだろうか?

金持ち一家をめぐる惨劇を描いた「パラサイト 半地下の家族」が成功を収めたから、長いこと寝かされていた本作に似た雰囲気があることに気付き、映画化しようと思ったのだろうか?ちょっとエロな描写がある所や、実質ホラーなストーリー展開も「パラサイト」と同じだしね。

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とりあえず、もっと酷い出来だと思っていたので見終わっても、そこまでガッカリ感はない。ただ、“デタラメすぎるのにも程があるでしょ?”とは思った。

 

予告編を見る限りでは、ヒロインの再婚相手の医師も連れ子の娘も平民階級出身をコキ使うために家族に迎え入れたという風に見えたが(それこそ、「パラサイト」を意識か?)、実際に本編を見ると凶悪なのは娘だけで、医師は精神は病んではいるものの、どちらかというと娘に洗脳されている状態に近いように感じた。

また、ヒロインも医師も娘も何かあると左耳をおさえていたが、もしかすると、虐待されて育った者は別の人間を虐待するということを言いたいのだろうかと思った。

医師に関しては、彼の母親が子どもの時に叱って叩いたことにより左耳が聞こえなくなっているということを言っているから(片耳が聞こえないのに医師をやっているのはどうなのよ?)、娘もヒロインも児童虐待の被害者ってことなのかな?

ヒロインは出ていった母親に虐待されていたとしても、娘は誰に虐待されたんだ?浮気して別れた医師の妻か?それとも、医師なのか?

いつの間にかヒロインが異常な行動をする医師や娘と同じ側に行ってしまったように、虐待された者は自分を虐待する者と離れられなくなるということを言いたいのかな?確かに夜の公園で、児相から虐待の疑いをかけられていた母親が娘と仲良く遊んでいるシーンもあったしね。

 

そして、医師とヒロインがインフルの予防接種に見せかけて児童に大量のインスリンを投与し殺害するというオチには唖然とするばかりだが、その前にモンスターペアレンツとして学校に乗り込んでいっているのに、普通に予防接種担当の校医として校内に入り込めているのはおかしいでしょ。しかも、医師でも看護師でもないヒロインが帯同しているのは意味不明。

 

それから、イマジナリーラインがおかしいシーンもいくつかあった。酔っ払った医師が電車にひかれそうになるシーンで電車の進行方向が変わるのはありえないよ。ど素人が作った映画としか思えない。

 

そして、間一髪で救われた直後に嘔吐した医師をヒロインが介抱するシーンが何故か明るい朝のシーンになっているのも意味不明。誰もおかしいって思わなかったのか?

それとも、ひかれそうになったシーンは夜ではなく、始発列車が動き出した直後の時間帯だとでも言いたいのか?

 

それから、やたらと山田杏奈の太腿が映ったり、スカートの中が見えそうで見えないみたいなカットが目立ったが、狙っているのか?

 

あと、エロ関係でいえば、土屋太鳳に“お○ん○ん”と言わせたり、田中圭とお医者さんごっこをさせたり、田中圭と何度もベッドに入るシーンを演じさせたりしているのに、一度も土屋太鳳の乳首どころか乳房も、それどころか、下着姿すら出てこないのはおかしい。そんな中途半端なことをするなら、エロ絡みのシーン、全部NGにすればいいだろって思う。もしかすると、本作のオファーを土屋太鳳が何度も断っていたのって、倫理的な描写ではなく、エロ描写なのではないかという気がしてきた。

 

そもそも、土屋太鳳も田中圭も、声がアレだから、何をやっても下手な演技にしか見えないんだよね…。

 

それにしても、土屋太鳳のオワコン臭の漂い具合、さらに悪化しているよね。前作の「フード・ラック!食運」もそうだし、本作もそうだけれど、ヒットしそうにない作品が続いているからね。

一時期は年上男に好かれるタイプ=女性に嫌われるタイプとして広瀬すずと同じような立ち位置にいた。でも、すずほどは嫌われていなかったはずなんだよね。アンチの数は裏方スタッフを見下した発言のせいで圧倒的にすずの方が多かったし、朝ドラ「なつぞら」で演じたヒロインのわがままキャラがすずの嫌な奴イメージをさらに増長させた部分もあった。だから、嫌われ度でいえば土屋太鳳の方が安全圏にいたはずなのに、完全にキャリアや人気の面では、すずに差をつけられてしまったように思える。

 

広瀬すずは、主演やヒロイン役の作品では興行成績でも彼女の演技でもアタリ・ハズレの差はあるかもしれないけれど、助演に回った時は結構いい演技を見せるんだよね。特に是枝裕和とか李相日、岩井俊二といった作家性の強い監督の作品に出た時の演技は秀逸だと思う。

でも、土屋太鳳には、そういうのがないんだよね。あの声のために演じることができるキャラクターが限られてしまうというのはあるが、伊藤沙莉のように活躍しているケースもあるのだから、汚れ役でも厭わずにやれば、個性派演技女優の道も開けると思うんだけれどね。

あと、出演映画を見ていると、オールスター映画みたいなのを除くと助演作品が少ないんだよね。事務所の方針なのかもしれないが、それだと、さらにオワコン化が進むだけだと思うな。

年齢的にもキラキラ映画は難しくなっているのだから、そうなると結局、「フード・ラック!」や本作のようなB級テイストの作品にしか出られなくなってしまうし、そういう作品は大ヒットにはならない。それで、さらにオワコン化は加速していくわけだしね。

少なくとも、本作で乳首は見せなくてもいいから、乳房くらいは見せていれば、アイドル女優イメージから脱出できたのになとは思った。

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