自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』第1章

上映時間50分程度のいわゆるイベント上映作品。しかも、全6章で構成予定ということなので、ぶっちゃけ、見る前はそんなに期待はしていなかった。それに過去のテレビシリーズもきちんと見たことがなかったから、世界観とかもちゃんと理解していなかったし。

でも、本編を見てみたら、めちゃくちゃ面白い。まぁ、ジョン・ル・カレ作品や、007シリーズの影響下にあることは間違いないと思うし、今回の劇場版第1章なんかは、ル・カレ原作の映画「裏切りのサーカス」を思い浮かべてしまうほどだった。だから、スパイものの小説や映画の熱心なファンから“パクリ”と呼ばれても仕方ない内容だとは思う。

とはいえ、本当に面白かった。この手のイベント上映系アニメで、洋画に通じるレベルの作品って滅多にないよね。自分のように、テレビシリーズを見ていない作品でも、劇場で上映される作品なら映画とみなして、とりあえず見てみるという人間からすると、大抵は、ファン向けのサービス映像で終わっているって感じるものがほとんどだからね。

 

それから世界観が日本の作品にしては珍しく、今のワールドワイドな思考に近いんだよね。パラレルワールド的な世界を舞台にした広義の“なろう系”作品。特に、軍事的・政治的な要素を含んだものって、ネトウヨ思想に近いものが多いが、本作は洋画に近いテイストの国際感覚を持った作品だと思う。

確かに、そうした“なろう系”作品の多くでも、女性キャラの活躍は描かれているし、欧州を舞台にした作品でも白人以外のキャラも活躍している。でも、本作の多様性はどちらかというと、洋画や海外ドラマに近い描かれ方だと思う。ぶっちゃけ、このストーリーのまま、欧米で実写化できると思う。本当、こういうアニメって滅多にないよね。勿論、萌え要素もきちんとあるから、従来のアニメファンにも支持される。もっと知られてもいい作品ではないかなとは思った。

 

それにしても、今回の劇場版シリーズ、1章あたり50分程度の作品を6章にわたって上映ということは、それって、実質、テレビシリーズ1クール分とほぼ同じ分量なんだよね。テレビで放送せず、映画館で上映するというのは、テレビ放送後、DVDやブルーレイの売り上げで利益を得るというシステムがすっかり機能しなくなっているってのを実感するな。

 

まぁ、今回の劇場版第1章はイベント上映的作品にしては止め画も少なめだったから、大した視聴率にもならない深夜アニメとして世に出すよりかは、映画館でかけてもらった方が作品が輝くことができるとは思うけれどね。

 

ところで、コロナの影響で本作は本来の予定より10ヵ月遅れで公開となったが、次の第2章は秋に公開されるのか。今後は年2本くらいのペースで行くのかな?同じ全6話構成の「ガルパン最終章」はスタートしてから約3年3ヵ月を経て、やっと、第3章が来月公開されるが、もしかすると、「ガルパン」より先に、こっちの方が完結するのかな?

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