自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

「ブレイブ -群青戦記-」(ネタバレ含む)

TOHOシネマズの幕間で流れている新作映画情報でハリウッド・スターを呼び捨てにしている尊大なイメージしかなかった東宝シンデレラ出身の山崎紘菜がやっと、東宝映画のメインキャストとして出演する作品が公開されるということで試しに見てみることにした。予告編で見た彼女の制服姿、めちゃくちゃ可愛かったしね。

でも、活躍の場はほとんどなかった…。弓のシーンも予告編に流れている場面がほぼおいしいところで、中盤は人質にとられたままだしね。

 

それにしても酷い映画だった。原作を読んでいないから、原作はどうなのかは知らないが、本当、内容がない。

若者が戦国時代にタイムスリップするという話であれば、「信長協奏曲」や「アシガール」があるし、若者に限定しなければ、「戦国自衛隊」なんてものもある。集団でタイムスリップするのは本作と同じだ。

また、戦国時代とか若者とかに限定しなければ、「十二単衣を着た悪魔」とか、「JIN-仁-」とか、この手の話はいくらでもある。それらの作品と比べて目新しい所などほとんどない。

さらに、時代劇の世界にタイムスリップする話だけではなく、外国作品の要素も何のてらいもなくパクッている。時計台のある建物に雷が落ちタイムスリップするなんて、まんま、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だ。しかも、丁寧に時計台のシーンでは本家のスコア(というか効果音に近いやつだけれど)をパクッた音も鳴っている。ここまで、オリジナル性のない作品をよく作れるものだと感心する。

 

そして、校舎ごとタイムスリップするって何だそれ?しかも、タイムスリップした戦国時代で、校舎内では現代と同じように、電気や水道が使えているのも意味不明だ。

 

それから、戦国時代の武士によって、次から次へと残虐な手段で高校生が殺される描写が相次いだり、直接そういうシーンはないとはいえ、女子生徒を性の奴隷にしようと考える武士がいたりして、本当酷い。よくこんな内容でGOが出たものだと呆れてしまう。

 

あと、これだけ大惨事が起きたのに、元の時代に戻ってきたらすぐに普通に学園生活が始まっているのも意味不明。校舎ごとタイムスリップしたのだから、校舎内に侵入した武士どもによって命を失った生徒が校舎内に大勢いるわけだし、タイムスリップ先で任務に当たっている際に校舎の外で命を落とした生徒は現代では遺体が行方不明のままのはず。それなのに、普通に授業が始まっているって意味不明。というか、冒頭では教員も被害にあっていたはず。そりゃないでしょ!

 

ついでにいうと、オチも誰もが予想した通りのものだった。全然、この作品ならではという要素がない!まぁ、本広克行に期待するのが間違いなんだけれどね。「踊る大捜査線」のせいで持ち上げられているけれど、この監督は「UDON」とか「少林少女」といったクソ映画のマスターピースをいくつも世に送り出している人だからね。

 

ところで、本作は豊臣秀吉徳川家康がトップに立つ時代が来ないように歴史を修正しようとする黒幕と、それを阻止しようする生徒たちの話だが、日本では歴史修正主義の意味を勘違いしている人が多いよね。

 

本来は、自国の黒歴史をなかったことにしようとする勢力。要はネトウヨみたいな連中のことを言うのにね。ところが、日本ではネトウヨによって、自国の黒歴史を後世に伝えること=自虐史観反日・在日というイメージが植え付けられてしまった。自民党が政権を取り戻して以降の8年ちょっとの間で国民のほとんどがネトウヨ化してしまったせいで、歴史修正主義自虐史観と思っている連中が多いんだよね。

 

従軍慰安婦は自ら志願した者がやっていて報酬ももらっているのだから慰安婦ではないとか、中国側の言う数字はデタラメだから南京大虐殺はなかったなどと言う連中が本来は歴史修正主義者なのに、ネトウヨや、ネトウヨとまではいかないものの、自民党批判するのは非国民と思っている人たちが多くなったせいで、自ら志願しようとしまいと、報酬をもらっていようといまいと、軍人相手に性的なサービスを提供したら、それは従軍慰安婦だという意見や、たとえ、中国側の主張する数字がデタラメだろうと、日本側の主導で複数の中国人がまとめて殺害された以上はそれは虐殺でしょという意見が歴史修正主義とされてしまうというおかしな事態になってしまった。

 

テレビニュースですら、そういう主張の自民党やその支持者に媚びて、“いわゆる従軍慰安婦”という言い方で、必ずしも、慰安婦と呼べる存在ではないというニュアンスで原稿を読んだりしているからね。本当、ダメダメな国になったよね。そんなことしているうちに、中国や韓国、インドどころか、ほとんどの東南アジア諸国にも追い抜かれてしまったんだからね、日本は…。

 

本作では戦国の世が続くように願った男が悪役だから、そう考えると、本作の悪役=歴史修正主義者はネトウヨなのかなとも思うが、この悪役は韓国人に嫌われている豊臣秀吉を殺そうともしている。そう考えると、コリアン寄りの主張を持つとされるパヨクにも見える。そういう政治的スタンスから見ても、本作はデタラメなんだよね。まぁ、東宝が緊急事態宣言が発令されても、延長されても、本作の公開予定を変更しなかったのは、失敗しても仕方ないクソ映画だという認識があるんだろうね。だから、無理矢理公開したのかのな?

 

ということで、山崎紘菜の今後はさらに不安になってしまった…。

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