自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

少女文學演劇「雨の塔」三島・都岡Ver.

去年はコロナの影響でライブ・エンターテインメントを見る機会が2月の終わりくらいから秋になるまでなかった。去年初めて舞台鑑賞をしたのは10月だった(年間観劇本数は2本)。コロナ前のおととしは、先の読めないシフトの仕事をしていたので、11月になるまで舞台を見ることはできなかった(それでも年間観劇本数は3本になった)。

 

なのに、今年は3月にしてはやくも今年最初の観劇をすることができた。しかも、既に来月には2本を見る予定となっている。コロナ禍で来場を避ける人が多くチケットが取りやすくなっているのだろうか?それとも、少なくとも土曜日は99%休めるという先の読めるシフトになったおかげだろうか?

 

そんな今年最初の観劇作品に選ばれたのはさゆりんご主演の舞台「雨の塔」だ。

 

コロナ前から坂道シリーズ関連の現場では女性ファンの当選が優遇されているとウワサされていた。男でも10代、20代が優遇されている。あるいは、30代以上の男でもカップルとか家族連れで来場する人は優遇されている。そんな風に思われていた。おそらく、ライブやイベントの映像作品やワイドショーなどで流れるニュース映像で、女性に人気、若者に人気というのをアピールしたいから、むさ苦しい30代以上の男を排除していたのだと思う。モバイル会員になっていても、全然、チケットを取れないことには、本当、腹が立っていた。

 

だから、2019年はTOKYO IDOL FESTIVALで日向坂46のステージを見た以外は、坂道関係の現場に足を運ぶチャンスは一切なかった。

 

2020年はコロナ禍になり、坂道関連のライブはほとんどが無観客配信になってしまったのでリアルで見たものは全くなかった。

 

なので、ライブやイベントではなく、さゆりんごが出ている舞台の鑑賞という形ではあるものの、乃木坂46メンバーをリアルなステージで見ることができたのは超久しぶりとなった。2018年の夏に秩父宮ラグビー場でバスラを見て以来の乃木坂現場となる。

 

ところで今回、前日にたまたま公演の公式ホームページを見たら、来場者は事前登録するようにと書かれていることに気づいたが、来場者は必ずしも公演の公式ホームページを見るとは限らないのだから、こんな呼びかけは意味ないと思うな。

あと、感染症対策を本気でしているなら、ちょっとの体調不良でも来場を取りやめられるように、来場をキャンセルした人には手数料も含めた全額を払い戻すべきだし、運営側から取られた手数料を含めたチケット代に配送料を上乗せまでという上限付きで転売も認めるべきだと思う。

 

自転車操業だから払い戻しはしたくないし、自分たちの利益にならないから転売もさせたくないという自分たちの都合を押し付けるだけでは感染症対策はできないよ。本当、日本の芸能界は自分勝手だと思うな。欧米のエンタメ界のコロナ対策を少しは見倣えよって言いたい。

 

というか、アルコール消毒を促すだけで検温もしなかったし、使えないアプリのCOCOAをダウンロードしているか確認させろという形だけの対策しているフリもしていなかった。完全に日本の演劇界はコロナは風邪モードに入っているな…。

 

新国立劇場の小劇場に来たのって久しぶりだ。そして、前回同様、今回もバルコニー席だった。普通の劇場だとバルコニー席って、見にくいんだけれど、ここはセンターステージ形式で上演することが多いから、バルコニー席の真ん中あたりだと、ほぼ斜め上から演者を見ることができて、なかなか良席なんだよね。そういえば、前回もバルコニー席の真ん中あたりだったな。

 

というわけで本題に入るが、何気に乃木坂メンバーの中で一番の演技派はさゆりんごだと思うんだよね。ミュージカル的な分野に限定すると、いくちゃんがトップだとは思うが、ストレート・プレイや映画、ドラマ、アニメまで含めてトータルで見た場合だと、さゆりんごかなと思う。

 

アニメ「クリオネの灯り」の主人公役は棒演技と批判されたけれど、同じ声優仕事でも、「SNSポリス」は一聴すると棒のようでいて、実はそうではないということが分かったので、「クリオネ」の演技はわざとなんだなと思う。というか、ハニワ映画での声優仕事は良かったしね。

 

勿論、実写ではナチュラルな演技派ぶりを見せている。乃木坂メンバーが複数出演した「あさひなぐ」でも他のメンバーより演技がうまかったし、単独主演作「東京ワイン会ピープル」はナチュラル演技派の真骨頂って感じだった。

それから、「賭ケグルイ」シリーズの2面性のある演技は良かったし、「乃木坂シネマズ」の一編であるぶっ飛んだ設定のエピソードをナチュラルにこなせたのもさゆりんごだからだと思う。

 

舞台では過去に「すべての犬は天国へ行く」と「FILL-IN」を見ているが、舞台でも彼女は巧者と呼べる演技を披露していた。

ぶっちゃけ、自分が見た演技仕事で“うーん”って思ったのは、「クリオネ」だけだった。なので今回も期待値は高かった。

 

実際に観劇した印象としては、やはり、さゆりんごは、「賭ケグルイ」の時もそうだったが、2面性のあるキャラクターを演じるのがうまいよね。

ぶりっ子な部分と闇を抱えた部分の演じわけが見事。今月まで毎月配信されていたカップスターの「乃木坂毎月劇場」で、“みんな仲良くしようよ!”って仲裁しているように見せかけて、実は影でしめているのがさゆりんごの実態だと明かされていたけれど、こういう演技を見せられると、本当にそうなのかもねって思う。

 

ダークな青春ものってストーリー自体も結構良かったと思う。深夜アニメとか深夜ドラマで1クールじっくり付き合ったらハマりそうな内容だしね。病んだ百合展開とか好きな人多いしね。まぁ、所々、差別的な描写も感じたのはどうかと思うが、許容範囲かな…。

 

ただ、さゆりんごに限らず、演者全員に感じたことなんだけれど、何か早口に聞こえて、台詞がよく聞き取りにくい箇所が結構あったと思う。

終演後、整列退場の呼び出しを待っている間に時計を見たら、開演から1時間半も経っていなかったから、実際、マキで進行していた可能性はあるような気もする。

おそらく、マウスシールドを装着しての演技だから、呼吸が難しく、自然と台詞回しが早口になってしまったのではないだろうか?そして、早口になった影響で、噛むことも増えたのではないかと思う。本当、プロの舞台としては恥ずかしいレベルで噛む回数多かったしね。

 

勿論、ベテラン俳優でも噛むけれどさ、上演時間が1時間半にも到達しない舞台で全キャストの台詞回しが何度もおかしくなるってのは異常だよ。しかも、噛んでいない箇所の演技はしっかりしているんだから、これはマウスシールドの悪影響だと言わざるを得ないかな。

そこまでして焦って舞台をやる意味ってなんなんだろうか?欧米のようにきちんと段階を踏めないのは何故なんだろうか?って言いたくなるが、結局、自転車操業で金がないからなんだろうね。

 

追記

出演者の退場時にさゆりんごに声かけしたオタ、いい加減にしろ!コロナ禍だということを何も理解していないだろ、お前ら!あと、グッズを持って舞台を見に来るのは演劇をバカにしていると思われても仕方ないぞ!

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