自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

劇場版『奥様は、取り扱い注意』

テレビドラマの劇場版だから、どうせ、良くてもテレビスペシャル程度の出来だろうと思っていたが、意外と社会性のある作品だった。

 

一度決めたことは、どんなに計画に間違いがあっても続行する国や自治体が描かれていたが、それって、まさに今、我々が五輪を巡って経験していることそのものだよね。

それから、開発に反対する左寄りの思想の集団を潰そうと警察や右寄りの政治家、大企業がグルになっている描写も沖縄をはじめとする日本各地で起きている事案を想起させる。

日テレというキー局が幹事社の映画で、しかも、テレビドラマの劇場版で、こうした与党や五輪に批判的なスタンスの作品をよく作れたものだと感心する。

 

まぁ、その割には、外国人差別と言われても仕方ないレベルの描写もあったので、思想は統一されているとは思えないけれど。

 

それに、そもそも、タイトルに“奥様”って入っているのが前近代的だしね。リベラル思想の人なら、「奥様は、取り扱い注意」じゃないだろ!「妻は、取り扱い注意」にしろ!と言うだろうし、女性に対して取り扱い注意と言うのは女性蔑視だって思うはずだしね。

 

だから、社会派っぽいことをやっているだけなのかもしれないけれどね。

 

そもそも、綾瀬はるか出演映画なんて、どれもこれもツッコミどころだらけというのが定石なんだから、真面目に論じても意味ないしね。

映画館で見た綾瀬はるか出演映画は20本あるけれど、この中でツッコミどころがほとんどなかったのって「海街diary」くらいだしね。

 

本作でも、記憶喪失になった綾瀬はるかの精神的カウンセリングをする診察室の棚が空っぽってのは偽の診察室という設定だとしても何か置けよって思ったし、市長参加の式典に反対勢力が何の問題もなく滑りこめているのもおかしい。というか、全編を通じてご都合主義だらけのストーリー展開だけれどね。あと、コスプレとLGBTQとスパイを同一視していないか?それは海外視点のポリコレ的にはNGだぞ!それから、片方は日本語で話し、相手は外国語で話しているのに話が通じているのにも感心した。

 

それにしても、綾瀬はるかって、同世代の女優の中ではアクション演技がずば抜けているよね。NHKドラマ「精霊の守り人」(そういえば途中までしか見ていない)で鍛えられたおかげかな。

それから、本作は邦画にしては珍しく、スタントマンの個人名がきちんとクレジットされていたが、キャストではなくスタッフ扱いになっていたことには違和感を抱いたかな。ハリウッド映画ならキャスト欄にクレジットされているし、画面に映っている以上は、スタッフではなくキャストだと思うんだよね。

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