自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

砕け散るところを見せてあげる

それにしても、清原果耶出演映画の公開が相次いでいるな…。

映画館の営業が休止された去年の緊急事態宣言の影響で(これだけ、感染状況が収まっていないのだから、今年の緊急事態宣言でも映画館やライブハウスなどの営業は休止させるべきだったと思う)公開が延期になっていた作品が今年になって相次いで公開されているという部分もあるとはいえ、去年の9月以降で6本目の公開作品だし、年内には少なくとも2本の公開が待機している。

さらには、5月からは彼女にとって3本目の朝ドラ出演作品にして、初のヒロイン(主人公)役である「おかえりモネ」も放送される。

間違いなく、今売り出し中の若手演技派女優であることは間違いない。

まぁ、朝ドラを含むNHK作品のみならず、民放ドラマにもコンスタントに出ているし、映画の出演本数も多い割にはイマイチ、一般の知名度が低い気はするが…。

 

そして、清原ちゃん出演作品って、傑作もしくは佳作と呼べる作品が多いんだよね。それは、単独主演だろうと、W主演だろうと、助演だろうと変わらない。

去年9月以降に公開された6本で一番出来が悪いのは個人的には、彼女がちょっとしか出ていない「花束みたいな恋をした」だと思っている。

世間的には絶賛されているようだが、リアルなサブカル厨やオタク、マニアからすれば、あの作品のサブカル描写はいかにも、田舎者が憧れる東京の西側みたいな感じで好きになれなかったな。

次にダメだなと思ったのは、公開前の注目度で見れば、最もメジャーな作品だった「望み」かな。これは助演だった。そういえば、「望み」で父親役だった堤真一は、「砕け散る」では別のキャラの父親役で出ていた。

 

あとの4本に関しては、単独主演の「宇宙でいちばんあかるい屋根」が佳作。声優としてヒロインを演じたアニメ映画「ジョゼと魚と虎たち」が年間ベスト争いするレベルの名作。

 

そして、W主演の「まともじゃないのは君も一緒」と助演の本作が傑作って感じかな。

 

本作では、主人公の同級生の妹役(ヒロインの同級生役)だったが、優等生な部分とチャラい部分が同居しているキャラを演じていて、なかなか面白かった。「まともじゃない」でコメディ演技もいけることは証明されたので、今後もこういう明るい面を見せて欲しいなとは思う。

 

本作の主演、中川大志とは「ジョゼ」で共演しているし、朝ドラ「なつぞら」でも義理の兄妹役として共演しているから、息のあった演技ができるんだろうね。2人の共演シーンは重苦しい描写も多い本作において、清涼剤的な存在にもなっていたし。

 

それにしても、本作のかなりの部分を占めていたいじめの描写は見ていて辛かった。本当、これまでの自分の身に起きた色々なことを思い出してしまった。

 

  • 小学生の時、太っているから汗をかいて気持ち悪いと言った同級生(平均よりちょっと体重があっただけで、どちらかというと骨太のせいだったんだけれどね)

 

  • 小学生の時、家庭科の授業で使う道具などを便器に捨てた同級生

 

  • 中学生の時、こっちを気持ち悪いグループにカテゴライズした女子

 

  • 高校生の時、そっちから喧嘩を売ってきておきながら、こっちが反撃したら、こっちが悪者のように担任に吹聴し、こっちを停学寸前にまで追い込んだ葛飾区議のクソ息子

 

  • チーフAD時代、こっちを除け者にしようとした他のAD。まぁ、女子ADに恋愛感情を抱いていたことで避けられたのだろうが

 

  • どの番組にもいるが、お気に入りのディレクターやADのやることは何でも絶賛するのに、そうでない人間がやると酷評しかしないプロデューサーやキャスター、先輩ディレクターなど

 

  • 番組の忘年会や打ち上げに自分だけを呼ばなかったクソプロデューサー

 

  • 局員でもプロダクション社員でもないのに色々と意見を言うのが気に食わないという理由でこちらをパワハラの加害者扱いにして追い出しやがった局員

 

本当、いじめやパワハラ、嫌がらせの類を受け続けてきた人生だった…。

 

その一方で、加害者側になったこともある。というか、自分も迫害されるのが嫌で同調するという典型的なやつだが…。

 

  • 小学生の時、家が貧しいということでバイ菌扱いされていた女子。今思うと、結構、美人だし、グラマラスだし、大人になってモテるようになったんじゃないかなって気がする

 

  • 小学生の時、兄弟姉妹が多くて貧しいために2番目のバイ菌扱いされていた女子。この娘も今思うと、大人になると美人扱いされる容貌だったな

 

  • この2人に比べると、そこまでではなかったが、この2人と仲良かった女子も似たような扱いを受けていたな…。ちなみに、当時、自分の家から一番近い所に住む同級生が彼女だった。全ての同級生の自宅に徒歩で行ける東京23区には幼なじみという概念はないが、あえてそういう存在は誰かと聞かれたら彼女になるのかな。一時期、彼女は自分に好意を抱いていたんだよね…。別に好きな娘がいたし、同級生女子と仲良くしているのを男の同級生に見られるのも嫌だから、結構、冷たい扱いしていたな…。そして、その後、彼女は引っ越していったが、その引っ越し先でいじめられているという相談を受けたんだよね。“蛇と呼ばれて気持ち悪がれている”とか言っていたかな。でも、面倒くさいことに巻き込まれるのは嫌だし、聞き流してしまったんだよね…。それからしばらくして、同窓会で再会した時は結婚していたんだよね…。今思うと、Coccoみたいなルックスだったから、大人になればそりゃモテるよねって感じで、冷たくしたことを後悔していたりする…

 

そんな、色々なことを思い出してしまう作品だった。

 

しかも、本作のヒロインは途中からは同級生からのいじめだけではなく、父親からの虐待も受けていることが分かるから、本当、どんよりした気分になるんだよね…。

 

でも、この作品はそうしたいじめや虐待の問題を描いただけの作品ではなかった。

 

自分たちを攻撃する連中の単なるメタファーとして言及されていただけのはずのUFOがビジュアル化されて描かれているしね。しかも、視覚効果や音響にもそれなりの予算が当てられている。水難にあった人を救う“父親”の描写もきちんと描かれていて、しょぼい画にはなっていない。

 

さらに、このヒロインを虐待していた父親は単なる毒親ではなく、サイコな面というか犯罪者の面を見せてくる。これにはビックリ。父親役・堤真一のサイコ演技は絶品だった。

 

一体、自分の見ている映画のジャンルはなんなんだろうか?いじめや虐待を受けている少女と彼女を支援する先輩や同級生との恋愛や友情を描いた作品だと思っていたのに、この展開は何?となってしまった。

 

そして、見ているうちに最も違和感を増していく要素としてあげられるのが母親役の原田知世の存在だった。

“アレ?主人公の母親が原田知世じゃないのか?あの原田知世は別の時代の母親なのか?でも、主人公の母親とそんなに年齢差はないはずだよな?”とか色々な疑問がわいてくる。

その疑問に対する答えが、終盤になって明らかになるのだが、どう考えても時間軸的につじつまが合っていないんだよね。

まるで、デヴィッド・リンチ監督作品のように、意図的につじつまを合わせていないようにも感じてしまった。

 

でも、後半のポカーンとしてしまった所や、つじつまの合わない展開も含めて、本作が傑作であることには変わらないと思う。

そして、ヒロイン役・石井杏奈とその同級生役・清原ちゃんの可愛さは必見だ。

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