自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

Chaplin KABUKI NIGHT 『蝙蝠の安さん』

「Chaplin KABUKI NIGHT 蝙蝠の安さん」を鑑賞。
10代の頃から尊敬する映画人はチャールズ・チャップリンブルース・リーと言い続けてきた。
そして、これまでの人生の中で見た最も好きな映画は、映画マニア向けにしても、映画をよく知らない人に対しても、「街の灯」と答えてきた。
また、映画好きなら人生最後に見る映画。たとえば、あと数時間の命だが、映画を見るだけの力は残っているとしたら、何を見るかなんてのは考えたことがある人は多いと思うが、自分なら、それは「街の灯」だと思っている。
だから、当然、その名作中の名作である「街の灯」を翻案した歌舞伎が再演されるとあれば、見に行かずにはいられなかった。

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88年前の初演時は、翻案ではなく明らかに盗作・パクリの類であったが、今回は日本チャップリン協会が強力したり、チャップリン先生の息子が鑑賞しに来日したりしているので、オフィシャルなものになっているのだろう。
入場した瞬間、場内に映画のサントラ曲が流れていて、気分は一気に盛り上がってしまった。
そして、オリジナル版同様に残酷でもあり美しくもあり、ハッピーでもありアンハッピーでもある、あのラスト・シーンは泣かずにはいられなかった。
まぁ、場面転換に尺を取られたり、歌舞伎的な描写が必要だったりで、オリジナルにあった要素がいくつか削られてしまうのは仕方ないとはいえ、ちょっと物足りないかはとは思った。特に主人公と花売り娘、主人公と酒乱富豪の絡みの場面が減ってしまったのは物足りなさを覚えた。
でも、両国とか本所といった地名が出てくる我らが墨田区にちなんだ話として描かれた歌舞伎版「街の灯」は、十分に楽しめる作品だった。

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それにしても、若い観客いないな…。
歌舞伎もチャップリンも若い人は興味ないのかな…。
自分が中高生の頃とかは普通に地上波でチャップリン作品が放送されていたが、今はそういうのがないもんな…。

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そういえば、この歌舞伎、「街の灯」だけでなく、「黄金狂時代」ネタもやっていた。
あの、パン・ダンスが鯛ダンスになっていた…。