自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

映画館でのスマホ使用問題

ここ最近、ネット上で話題になっている「映画館でのスマホ使用問題」。

SNSでちょっとした意見を呟くだけで長文を書くつもりはなかったが、何日か経っても激論が交わされているし、ワイドショーのネタにもなってしまったので、自分も長々と意見を述べたいと思う。

まず、今回の騒動で一番問題なのは配信記事の記者側が「若者主語」で記事を書いてしまったこと。確かに、映画館ヘビーユーザーの自分からすると、若者が上映中にスマホをいじっている現場に出くわすケースは結構ある。ただ、10代~20代の若者だけでなく、スーツ族の連中や中高年の中にもいじっているアホはいるし、上映中に音を鳴らす不届き者は圧倒的に中高年の方が多い。

でも、この記事が「若者主語」で配信されてしまったために、映画館でのスマホ使用批判=若者批判になってしまい、それが若者からすれば、「今や生活には欠かせない存在となったスマホをロクに使えない老害どもが、妬んでうちらに文句を言っている」みたいに思われる結果になってしまったんだよな…。そして、年齢的には若者に含まれない映画ファンや映画人の中には老害扱いされたくないがために、スマホ使用を容認。もしくは、スマホを使用できる環境が将来的には必要とか、飲食店の分煙のようにスマホスペースを設けるべきだなどと主張する者も出てきてしまった。

それは違うでしょ!って思う。

やっぱり、映画や演劇は上映・上演中のスマホは禁止すべきだと思う。

こういうことを言うと、「海外では使っている人間がたくさんいる」とぬかすのがいるが、それはただ、マナーが悪いのが多いだけで、マナー自体は原則使用禁止なんだよね。

それから、「上映中の定義にはエンド・クレジットも含まれる」と映画ファンが主張すると、「そんなものを見る映画ファンはおかしい」って言いだす者も多いが、「それは違うよ!立派な上映時間だよ!」と言いたい。

自分は映画ファンなので、どんなクソ映画でも冒頭の映画会社ロゴからすべてのエンド・クレジットが出終わるまで、1秒たりともスクリーンから目を離さず鑑賞するのが礼儀だし、最後まで見た人間しか、絶賛にしろ酷評にしろ映画を批評する資格はないと思っている。

でも、一般観客にはエンド・クレジットが流れ出す瞬間に席を立つのが当たり前と思っているのが多く、中には座っているこちらに対して、「邪魔だ。嫌がらせするな」みたいなことを言うのもいるからな。まぁ、ハリウッド映画のエンド・クレジットでも「まだ見てんの?」みたいなジョークが流れることがあるし、機内上映なんかだとエンド・クレジットになった途端止められることもあるし、「ニュー・シネマ・パラダイス」なんかは完全に上映されない状態を美化しているし、タランティーノ作品には登場人物が上映途中に席につくシーンがよく出てくるから、我々の意見は少数派なんだろうな…。

ところで、映画マナーといえば、携帯・スマホの使用だけでなく、飲食に対して文句を言う映画ファンもいるがそれは違うと思う。上映前のマナーCMで言っている事項の中では、盗撮(録音含む)禁止と、携帯・スマホの使用禁止、それから、ノー・キッキン!は理解できるが、おしゃべり禁止や飲食に関するマナーは違うよねって思う。だから、「笑っちゃいけない映画館なんか行くか」みたいなのが出てくるんだよね。あと、飲食でいえば、「他店で購入したものの持ち込み禁止」は違うと思う。確かに映画館はぼったくり価格のフードやドリンクの売り上げで成り立っているのだろうが、飲食店ではないんだからね。「経営が厳しいんだから、フードやドリンクを買って支えるのが映画ファンだ」みたいな偽善的な正義論を語る連中も違うでしょって思う。フードやドリンク数回分で映画1本見られるしね。というか、最近はインターミッションなしで上映時間2時間半以上の作品がザラだから、尿意・便意を考えたら飲食なんかできないよな。

そして、映画館フードとマナーの関係で分かりやすい例といえるのが、TOHOシネマズで流れる「ポップコーンとコーラを一緒に買おう」キャンペーンのCMだと思う。

なんと、このCMは上映中にカップルの彼氏の方が彼女に促されて、ポップコーンを買いに行くって内容なんだよね。しかも、鑑賞中の他の観客の前を横切って。

つまり、映画館、特にシネコンにとっては、映画を見てくれる人よりも、フードやドリンクを買ってくれる人が大事なお客さんってことなんだよね。そして、「上映中にスマホを使って何が悪い!」って連中の方がフード・ドリンクを買う率が高い…。

まぁ、映画館マナーの改善はあきらめた方がいいってことかな。

以前は、好きな監督や俳優の作品、ディズニーやジブリの作品、賞レースを賑わせた作品などは、上映中に人の前を通るアホに邪魔された時は、後日また映画館に見直しに行ったりってこともしていたが、もう、今は映画館に行くたび、ほぼ毎回、マナーの悪い輩に遭遇するから、そういうことはやめてしまったし。

ちなみに、スマホ使用に関しては、自分は映画や演劇以外のコンサートや美術展などでは容認派かな。日本ではコンサートでのスマホには不寛容な人が多いのに、映画館では使うってのが理解不能だな。日本のコンサートでのスマホ使用に不寛容なのは、要は日本のレコード会社や芸能事務所が撮影禁止を訴えていて、それをファンが熱心にアーティストのお告げみたいに守っているからでしょ。

デジタルカメラが出てきた時点で世界的には不要な存在の生写真グッズや、ストリーミングサービスが出てきた時点で世界的には売り上げが落ちたライブDVDとかの収入を守りたいから撮影・録画・録音を禁止しているだけだからな…。世界的にはウィーン・フィルニューイヤーコンサートのような上流階級の集まる場でもスマホ撮影するのがいるくらいだからな。まぁ、洋楽ベテランアーティストの中には「俺の歌を聞け!カメラでなく肉眼で見ろ!」みたいな主張をする人も増えたが、圧倒的に「写真を撮って拡散してくれ!スマホのライトをつけてくれ!」って呼び掛ける方が多数だからな。

とりあえず、結論としては「老害うぜぇ」とか「だから、映画マニアは困る」とか言われようと、上映中のスマホ使用は認めたくない。でも、利益を考えると映画館はあまり積極的に対策をしないんじゃないかなとは思う。

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