自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

アイリッシュマン

上映時間3時間29分(3時間30分と記されているものもある)の大作映画「アイリッシュマン」を見た。

マーティン・スコセッシ監督作品
ロバート・デ・ニーロアル・パチーノジョー・ペシ共演
●賞レースを賑わせる作品と有力視されている
●スクリーンで見る機会が限定的なネトフリ作品が劇場公開される

などといった条件が揃えば、そりゃ、映画館に行きますよって感じかな。

 

とりあえず、3時間29分の長さは感じなかった。心配していた尿意に襲われることもなかった。でも、さすがに集中力は持たないので、ぼーっとしてしまう瞬間もあるし、何より目が疲れる。エンド・クレジットの頃なんて、かすみ目になってしまった。
インターミッションなしで3時間29分って長すぎだよ!
個人的には映画は2時間以内がベスト。どんなに長くても2時間半までだと思うな。

 

というか、マーティン・スコセッシ監督作品は長尺作品が多すぎる。ドキュメンタリーを除くと(ドキュメンタリーでも2時間超えの作品は多い)、上映時間が2時間以内に収まっていたのって33年前の作品で、ドキュメンタリーやオムニバス作品を除くと15本前になる「ハスラー2 」まで遡らないといけない。しかも、この「ハスラー2 」の上映時間は1時間59分(2時間ちょうどという表記のものもある)とギリギリ2時間以内だし…。


年取ると話が長くなる人は多いとよく言われ、映画監督でも大巨匠クラスになると尺が長くなる人は多い。大林宣彦とかね。でも、スコセッシ監督作品は昔から長いから、年齢は関係ないんだろうな。クエンティン・タランティーノも映画監督としては若い方に入るが、長編第1作以外は長い映画ばかりだし(2部作やそれに近い構成の作品は両作品合わせた上映時間でカウント)、そういう編集できないタイプの監督というのはいるからな…。
まぁ、出来は良いからいいんだけれどさ…。

 

そして、相変わらずスコセッシ監督作品は音楽の使い方が上手い。それから、ロビー・ロバートソンを使うの好きだよな。まぁ、IN THE STILL OF THE NIGHTが3回も流れたのには驚いたが。でも、この曲が流れて一気に作品の世界観に引き込まれたってのはあるかな。

 

内容的には、いかにも賞レース好みの内容って感じかな。ジミー・ホッファの名前なんて久しぶりに聞いたが、それに絡めて、ケネディベトナム戦争の話も出てくるし、賞レースを賑わす作品になりそうだというのは納得。メタ構成なところも通には受けるだろうしね。

 

賞レースといえば、メインの3人(デ・ニーロ、パチーノ、ペシ)の演技は鳥肌モノだった。ただ、若い頃を演じた際のデ・ニーロらの姿が特殊メイクではなく、VFX処理で若い姿になっていることに抵抗感は持たれる気がするな。
最近では、「キャプテン・マーベル」のサミュエル・L・ジャクソンや「ジェミニマン」のウィル・スミスが同じことをやっているが、何か違うようなという気もするんだよな。演技の良し悪しとは別にね…。
ロード・オブ・ザ・リング」や「猿の惑星」のアンディ・サーキスのモーション・キャプチャー演技と要は同じだもんね…。
モーション・キャプチャーは賞レースでは演技として認められていないんだからね…。

 

最後に一言。
昨年度の「ROMA」もそうだが、これも映画館で見るべき作品だな。結局、従来の映画会社が安全パイの作品ばかりを作りたがるから、映画館で見るべき作品がネトフリ映画になってしまうんだろうな…。1日1回とか、1週間しか上映されないとかいう作品も多いが、シネコン向きでない作品もコンスタントに劇場公開されている邦画はそういう点では恵まれているのかな?

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