自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』ディレイビューイング 前編

チケット入手が困難だった。
しかも、上演中に菊之助の負傷もあった。
そんなこともあり、舞台での鑑賞が叶わなかった新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」が映画館で上映されるということで、高額なチケット代が気になりはしたが、あまり迷わず見に行くことにした。
チケット代が高額にもかかわらず、一回で全部見せてくれず、今回は前半だけというのは、ちょっと腹立つが。

それにしても、観客は高齢者ばかりだったが(なので、マナーも悪い)、何か、パヤオ作品をまともに見たことなさそうな人ばかりだったな…。
映画を見ているか、原作を読んでいるかの、少なくとも、どちらかの経験がないと分からないんじゃないかなって気がする。歌舞伎ファンの高齢者の皆さんは理解できたのだろうか?まぁ、贔屓の役者が見られれば、それで満足なんだろうな。

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それにしても新作歌舞伎という形ではあるが、久しぶりにナウシカを見て思った。
やっぱり、パヤオって左翼だよな。
しかも、軍事マニアの左翼。
そういうのを再認識させてくれた。
日米同盟とか、日本と近隣アジア諸国との関係とか嫌でも連想付けたくなる話だもんな…。
ちなみに、パヤオ環境保護論者だと思っている人も多いと思うが、今は本当にそうかもしれないが、ナウシカラピュタの頃は全く興味がなかったらしい。
ナウシカラピュタを見ると、環境保護論者だと思う人がいるのも当然だと思うが、当時、C.W.ニコル大先生との対談で、パヤオははっきりと興味ないと言っていたからな…。つまり、単なる作品の設定で環境問題が出てきただけだったらしい。パヤオって矛盾だらけの人だよね。

 

それにしても、本作を見ていると、「果たして、これは歌舞伎なのか?」って思う人もいるかもしれないが、本来は歌舞伎は大衆娯楽だし(だから、この映画館上映版のチケットが高額なのも納得がいかないんだよな…)、歌舞伎という文字を見れば分かるように、音楽や舞踊と合わせて演技が披露されれば、歌舞伎なんだよね。まぁ、見得を切るとか、拍子木を打つとかいった最低限のお約束があった上で歌舞伎役者が演じていれば、全部歌舞伎なんだよねということかな。相撲取りが食べるものは何でも、ちゃんこと呼ぶのと同じ感覚なのかな。

 

そして、観客は女性ばかりだった。
いかに、日本の男は無趣味な連中が多いかが分かる。そりゃ、映画館がレディース・デーを実施し、クラブが女性の料金を男より安くし、コンサートのチケットの当選者が女性優遇になるわけだよな。しかも、男は見たけりゃ、一人でも行くが、女性は連れがいる場合が多いもんな。

 

ところで、本作はキネ旬によると映画扱いされず、データベースにも掲載されていない。要はシネマ歌舞伎とか、松竹ブロードウェイシネマ、ゲキシネみたいなのとは違う扱いらしい。確かに、ディレイビューイングと名乗っている。でも、頭に松竹映画のロゴが出るんだから、映画じゃないの?って気もするんだけれどな…。まぁ、エンド・クレジットは原作、演出などごくわずかなスタッフが表示されるだけで、キャスト名は一切出てこないので、そういう部分でいえば、コンサートや舞台のライブ・ビューイングのノリなんだろうが…。それに、ビューイング扱いにした方がチケット代を高くできるしね。シネマ歌舞伎だと、前編だけで4300円なんて入場料はふざけんなって思うが、舞台のライブ・ビューイングなら、まぁ、こんなもんかって思うからな…。金をむしりとりたいから映画扱いにしないんだろうな…。

 

今回の前編は、上映時間3時間超え(休憩時間含む)だったが、休憩時間中に画が映っていると(ほとんど静止画でも)、一応、映像業界に属している人間としては見てしまうから、全然、休憩にならないんだよな…。完全に上映をストップした休憩にしてほしいと切に願う…。

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 また、4300円という高額チケットを購入し、後編も見なくてはいけないのか…。