自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

シェイクスピアの庭

ウィリアム・シェイクスピアの晩年を描いた映画「シェイクスピアの庭」を鑑賞。

原作戯曲を読むのが好き。舞台で上演されたシェイクスピア作品を見るのが好き。シェイクスピア戯曲を映画化した作品が好き。媒体は何でもいいが、シェイクスピア戯曲が好きな人なら間違いなく楽しめる作品だった。

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そして、これは本作で監督・主演を務めるケネス・ブラナーだからこそ作ることができた映画だと思った。元々、彼はロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの一員として舞台で活躍していたし、映画では、「から騒ぎ」「ハムレット」などを監督している。監督を務めてはいないが「オセロ」には役者として出演し、「リチャード三世」の映像化作品とそのメイキング、原作戯曲の背景を追ったドキュメンタリーをミックスした「リチャードを探して」にも出演している。さらには、「ハムレット」を上演する売れない役者たちを描いた「世にも憂鬱なハムレットたち」なんていう監督作品もある。今の英国にシェイクスピアの晩年を描いた作品を監督し、シェイクスピアを演じるのに彼以上にふさわしい人はいないでしょって感じ。

しかも、妻役は「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー助演女優賞を受賞したジュディ・デンチで、同性愛的関係にあったとされる伯爵役もケネス・ブラナージュディ・デンチ同様、舞台でシェイクスピア作品を演じてきたイアン・マッケランと文句のつけようがない面子が揃っている。

ブラナーとマッケランの長い会話のシーンはまるで、舞台を見ているような緊張感があった。何故か、1ショットの切り返しで2ショットは冒頭と最後のみではあったが…。

とにかく、俳優陣の演技は素晴らしい!

 

それから、映像美も見事!自然光を使ったライティングが本当美しい!まぁ、それによって、シーンによっては、台詞を話しているはずの役者の姿がよく分からないなんてことも確かにあるが…。

 

さらに、さすがケネス・ブラナー!と思ったのが、シェイクスピア戯曲の要素をさりげなく台詞などに混ぜていること。これは、ブラナー作品ではないが「恋におちたシェイクスピア」でもやっていた手法。個人的には終盤で「夏の夜の夢」の引用をしていたのが気に入ったかな。

本当、ケネス・ブラナー監督により、「夏の夜の夢」を映画化してほしいと思った。そういえば、ブラナー氏はかつて、シェイクスピア全戯曲を映画化したいとか言っていたと思うのだが、あの話はどこへ行ったんだ?

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 ちなみに、自分が最も好きなシェイクスピア戯曲は「夏の夜の夢」。映画化作品では、フランコ・ゼフィレッリ監督版の「ロミオとジュリエット」が一番好き。ケネス・ブラナー関連作品では「から騒ぎ」かな。