自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

Tokyo 7th シスターズ-僕らは青空になる-

本作を見て、正直なところアイドルアニメって飽和状態なんだなというのを実感した。ファンにとっては待望のアニメ化なのだろうが、映画館はかなり空いていた。上映館が都内でたったの2館しかないのにもかかわらず空いていたんだからね…。

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結局、「アイドルマスター」、「ラブライブ!」、「アイカツ!」といった“老舗”のシリーズには勝てないんだろうね…。

現在放送中のテレビアニメ「アイドリープライド」なんて結構面白いのに、主題歌シングルはオリコン最高位32位で終わってしまっている。

スフィアのメンバーが劇中に登場するグループ名義で出した楽曲はオリコン週間チャート初登場30位。同様にTrySailのメンバーが劇中に登場するグループ名義で出した楽曲はオリコンのデイリーチャート初登場27位。スフィアやTrySailを動員してもこんなもんだからね。

しかも、キャストには神田沙也加も参加しているし、演じている役が元アイドルの幽霊っていうとんでもない設定なのに、ほとんど話題になっていないしね…。

 

アイドルアニメの派生ともいえるガールズ・バンドものは、「けいおん!」以降も「BanG Dream!」とか人気コンテンツは出ているし、演劇モノの「レヴュースタァライト」とか、DJモノの「D4DJ」とかは何とか頑張っているとは思うけれど、アイドルアニメは老舗御三家の新展開を追うので精一杯って感じになっているのかな?

それにしても、「ラブライブ!」は遂に新シリーズはNHK作品になってしまった…。これまで、「進撃の巨人」など多くの民放コンテンツがNHK作品にされてしまっているけれど、遂に「ラブライブ!」も再放送ではなく新作がNHK作品になってしまうとはね…。このままだと、「鬼滅の刃」2期もNHKが持っていきそうだな…。

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ということで、本作を見て、アイドルアニメの新規参入の限界を感じてしまった。まぁ、「ナナシス」というコンテンツ自体はパッと出ではないけれど、アニメとしては新参者ということで…。

 

そして、本作自体の出来も微妙だった。「ナナシス」を長年追ってきた人にとっては感慨深いものかもしれないが、映画としては不出来もいいところだと思う。

 

まず、本編前の“舞台挨拶”と称した特典映像がいらないな。ほとんど止め画だし。

それから、この特典映像の中で観客にスクリーンの撮影を許可する“フォトセッション”タイムなんてものがもうけられているが、これもいらない。まぁ、このサービスは本作以外にもやっているけれどね。

テレビ番組やネット配信なら、ながら見も多いから、そういうスマホ連動的イベントも分からないでもないが、映画館に来ている人間にスクリーンから目を離させる行為をさせるというのは理解できないな。

映画を作っている人間としてのプライドがあったらできないと思うんだけれどね。結局、その撮影画像をSNSやブログで拡散してもらわなければならないほど出来に自信がないってことでしょ。

 

そして、本編だが、いきなり延々とメンバーや世界観の説明台詞が不自然なくらい続いてしまい、見るのをやめたい気分になってしまった。テレビアニメの第1話なら分かるけれど、劇場公開作品でこれをやるのは無能としか言えない。

それから、アイドルアニメなのに、パフォーマンス・シーンが少ない。予算の都合もあるのかもしれないし、作品タイトルにちなんで上映時間を77分にしたかったので削られてしまったのかもしれないが、物足りないとしか言えない。

あと、2034年の世界を舞台にしているというが、モニターディスプレーが映画やアニメでよく登場するテンプレ的な未来風のものになっている以外は全然、現在と同じ風景描写だし、女性観なんかも古い日本の考え方のまま。胸や股間を強調して映す萌え描写も相変わらず。全然、未来という感じがしなかった。

というか、もう、コロナ前と同じようなアイドルのライブのやり方って、コロナが完全に終息(最低でも収束)しない限り無理だと思うんだよね…。

 

それはさておき、水瀬いのりが元アイドルのマネージャー役。つまり、ベテラン扱いになる時代になったことには衝撃を受けた。

アニソン・カウントダウンの老舗「こむちゃっとカウントダウン」で男性声優の楽曲が上位を占めるようになって久しく、最近はそれにプラスして、ジャニオタの組織票も入るようになったから、水樹奈々田村ゆかりのようなレジェンド級を除くと、女性声優が上位にランクインするのは難しい状況となっている。

なのに、何故かアイドル声優的人気を誇る女性声優の中で水瀬いのりだけはシングルを出すたびに首位争いを繰り広げているのが不思議で仕方なかったが、今回の「ナナシス」における立ち位置でベテラン扱いされていることが分かり、「こむちゃ」における好成績の理由が何となく分かった。

でも、声優アーティスト活動をはじめて5年ちょっとでベテラン扱いって、女性声優のサイクルはやすぎでは?まぁ、声優として登録されている人の数が過去最大と言われているから、アイドル声優でいられる期間も短いってことなんだろうね。

それで、ベテラン扱いされる人は声優人生を長生きできるが、そうでない人は“あの人は今?”状態になってしまうってことかな?

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