自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

ターミネーター:ニュー・フェイト

原題は「ダーク・フェイト」なのに、邦題は「ニュー・フェイト」って、まるっきり逆の意味じゃないか!ふざけんなって思ったが、内容を考えると邦題の方が正しい。原題のみならず内容とも真逆の邦題にしてしまった「ゼロ・グラビティ」とは大違いだ。

一番の見どころ?はラテン調のターミネーターのテーマが聞けることかな。

あと、冒頭のシーンが配給会社・製作会社のロゴと混ざっていて面白かった。

そして、最後にブエナ・ビスタのロゴが出てきて、フォックス映画がディズニー傘下になったことを改めて認識した。

 

ところで、日本における本作に対する批評、特に批判的な意見について大きくわけると

①T2以来の正当な続編

②ポリコレ要素

この2点で語られていることが多いようだ。

 

個人的には、つまらないとは思わないが、T2の正統な続編という宣伝文句で期待が大きくなりすぎてしまった点は否めないかなとは思った。シュワちゃんの出番が少ないし。それから、ターミネーター1体倒すのに、人間2人、改造人間1人、ターミネーター1体の計4人?で攻撃するのは戦隊ものなみの卑怯さだなとは思った。

 

主な論点の話に戻るが、まず、①については、そもそも、「ターミネーター2」って過大評価されすぎではないかと思う。確かにジェームズ・キャメロンは面白い続編を作ることで定評がある。長編映画監督デビュー作が「ピラニア」の続編「殺人魚フライングキラー」で、これが興行的にも批評的にも失敗したことが、続編映画に対する意識を高めるきっかけになったのかどうかは知らないが…。

同様に他の監督作品の続編である「エイリアン2」は、1作目にはあったホラー要素はかなり薄れたけれど、評価は高く、1作目より好きだという人も多い。脚本家として参加した「ランボー/怒りの脱出」は1作目にあった感動作や反戦映画の要素はなくなったが、シリーズのフォーマットを決定付けた作品でアクション映画としては面白いし、前作以上の大ヒット作になった。「ターミネーター2」に至っては、「エイリアン」や「ランボー」とは異なり、自分の作品の続編なんだから、面白くなるのは当然といえば当然かもしれない。

 T2は大ヒット作だし、溶鉱炉に沈んでいくシュワちゃんはネタにされるほどの名場面になったし、ガンズによる主題歌の効果もあるかもしれない。

 でも、映画としての完成度は1作目にはかなわないと思うんだよな。予算が増えて、VFXも高度なものになったから完成度が高く見えるだけだと思うんだよな…。

 そういえば、暗いシーンが多いと批判している人も多いが、そもそも、1作目も夜のシーンが多かったよね。結局、T2信仰が強いから、昼のシーンが印象的なT2基準で見て、夜のシーンで映像をごまかしているって思ってしまうんだろうな。夜のシーンの方が撮るの大変なんだけれど、素人はゴマかすために夜のシーンにしているって思うんだろうな。まぁ、T2の頃とVFX技術があまり進歩していないという意見には同意するが。

 

T2以降作られた3本の「ターミネーター」映画は、ジェームズ・キャメロンは原案というクレジットのみ。なので、メガホンはとってはいないものの、きちんとスタッフとして復帰したのはT2以来。

リンダ・ハミルトンもT2以来の復帰。

シュワちゃんだって、キャメロン&リンダ不在時の3本のうち、1本は出演していない。(過去素材をCG処理したものが登場してはいるが)

だから、この3人が揃ったということで期待値が高まってしまったのは仕方ないんだろうけれどね…。

 

②に関しては、文句を言っている連中には「何言ってんだ?お前ら!」と言いたい。

確かに最近のハリウッド映画には、反トランプの思いが強いせいか、女性や黒人、同性愛者などへの度が過ぎた配慮が多いと思う。

元々は白人が演じていたキャラクターを黒人が演じたり、男性が演じていたキャラクターを女性キャストでリメイクしたりとか、そういうのが多いのも正直うんざりする。

また、現在のハリウッド映画はチャイナ・マネーなくしては成立できない状況になってしまったため、日本のバブル期のハリウッド映画のように日本文化をおちょくるような描写もなく、中国人を中心とするアジア系やヒスパニックなどの出番も増えている。

こうした、反トランプとチャイナ・マネーの影響で作られた作品には、原作や前作、オリジナル版の持つ面白さが減ってしまったものが多いのも事実だと思う。

でも、キャメロン作品に関していえば違うでしょ!

そもそも、この人の作品は「ターミネーター」、「ターミネーター2」以外にも、「エイリアン2」や「タイタニック」、「アバター」など強い女性がトレードマークになっているよね。それに、一時期結婚していたキャスリン・ビグロー監督は「ハートブルー」や「ストレンジ・デイズ」などのアクションやSF作品で人気を集め、戦争映画「ハート・ロッカー」で女性初のアカデミー監督賞を受賞するなど、こういう言い方をすると女性差別になるかもしれないが、男勝りの作風で知られる人だし…。

 さらに、マイノリティ視点でいえば、「ターミネーター」シリーズのサラ・コナーや「タイタニック」のジャックは下層階級の人間だし、「アバター」の主人公やプロデュース作「アリータ」の主人公は障害者だし、虐げられる立場の人間というのもキャメロン作品ではおなじみだよね。

それを女性、しかもメキシコ人が活躍するからって、ポリコレ配慮映画扱いするとはね…。ポリコレは米国では反トランプ、日本では反安倍とイコールな部分があるから、ネトウヨ思想のオッさんどもは、反トランプ・反安倍映画なんか許せないと思い込んでしまい、元々のキャメロンの作風を忘れているのでは?

それに、今回メガホンをとったテイム・ミラー監督の代表作「デッドプール」だって虐げられる者たちの映画だしね。

 

それにしても、サラ・コナーが伝説でも、ジョン・コナーが偉大な指導者でもないタイムラインの映画が、リンダ・ハミルトンジェームズ・キャメロンの復帰したシリーズで作られるとはね…。この2人が不在の過去3作と同じじゃん!

というか、何度もリブートしている「スパイダーマン」や「バットマン」などのアメコミ映画や「エヴァ」と同じだな。批判されたら、人気が落ちたら、別のタイムラインの話にすればいいってのは。どうなのかな?そういうの…。

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