自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

アカデミー長編アニメーション賞ノミネート発表

「天気の子」がノミネートされないというのは、洋画も見て、海外ニュースもチェックしている人間なら誰でも予想できたこと。
というか、アレだけ女性の自立を描いていた「アナと雪の女王2」がノミネートされていない方が意外だ。
「天気の子」は面白かったと思うし、映像はきれいだし、ヒロインのキャラデザはオタク要素を持った人間なら好きになると思う。でも、賞にノミネートされるに値するような技術的な挑戦とか、社会的なメッセージとかはほとんどない。
あのオチでなければ、気候変動問題を扱った社会性のある映画、それこそ、グレタ嬢なんかと絡めて評価される可能性もあったかもしれないが、あのオチでは、異常気象は単なる記号・背景でしかないからね。
それから、子どもだけで生活している姉弟や、田舎を飛び出した主人公に関しても、その背景が曖昧なのも評価されない理由かな。その辺をきちんと描けば、それこそ、「パラサイト」や「ジョーカー」のような格差社会を描いた作品として評価されたのかもしれないが。
アニオタにはネトウヨ思想の人間が多いから、社会性の強い作品は左翼性の強い作品と思われてしまうので受け入れてもらえない。だから、日本のアニメは中途半端な問題提起しかできないんだろうなという気はする。勿論、パヤオとか例外はいるが。
それから、アニオタに媚びるといえば、彼らが極度のCGアレルギーだから、新しい技術の導入にも消極的になってしまっているってのも賞レースで評価されない要因だよなと思う。まぁ、日本の現場が新しい技術を導入するほどの予算がないってのもあるだろうが。
面白い、画がきれいだけじゃ、ノミネートは難しいよね。
今回、ノミネート資格を持っていた日本作品では「海獣の子供」が社会性メッセージの面でもアート性でも一番、賞レース向きだと思っていたが、「天気の子」と同じ東宝グループの作品だから、東宝としては、「天気の子」をプッシュしたいので、「海獣の子供」のキャンペーン活動をあまりしなかったんだろうな。
それにしても、アニメーション部門もネトフリのパワーがすごい。世界的にはネトフリの配給網で世に出たフランス作品「失くした体」、スペインで製作された「クロース」と2本がネトフリ系作品だからな…。

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