自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

King Gnu『CEREMONY』

前のアルバム『Sympa』のリード曲「Slumberland」は確かに批判されている通り、ありきたりな上っ面だけの社会的メッセージ・ソング、メディア批判という部分はあったと思う。(MVも含めて)でも、カッコいいとは思った。

でも、アルバムから間髪おかずにリリースされたアルバム未収録配信シングル「白日」は良い曲だとは思うが、ぶっちゃけ、尖ったところがある邦楽アーティスト、実力がある邦楽アーティストが注目された途端に単なるJ-POPになってしまうという典型的なパターンだと思った。

Suchmosのように、 NHKワールドカップテーマ曲という強力タイアップがついても、好き勝手なことをやり、結果として、にわかファンを大量に手放し、自分たちのやりたい音楽をやれるような方向に戻すという手もあるが、King Gnuはそうではなかった。

次から次へとタイアップが付いたの彼等の新曲群は、どの曲も、汎用型J-POPといった感じに仕上がっていた。ぶっちゃけ、もう終わりかなと思った。

しかも、今回のアルバム『CEREMONY』のリード曲「Teenager Forever」なんて、よくあるJ-POPだし、MVなんかはネトウヨYouTuberが海外を見下して作ったような動画にしか見えなかった。

でも、その「白日」以降リリースされた数々の汎用型J-POPと思われた楽曲群は、今回のアルバムの中の1曲として聞くと、結構良かったりする。よくある古臭い、ダサい邦楽と思われた曲もカッコよく聞こえる。音楽性も結構幅広いし。同じバンドの曲とは思えない時もあるかもしれないが。まぁ、曲と曲のつながりを、アルバム的な構成を意識していたってことなのだろうか。

でも、アルバムの収録時間は36分50秒と短いんだよな。インタールードみたいな曲も含めてではあるが、12曲で36分ってパンク系でない今の邦楽ではかなり短い部類に入ると思うが、これって、世界では現在のスタンダードなんだよな。邦楽はいまだに4分半、5分の曲が多い。アイドルの曲ですら、そんな長さの曲だらけだが、洋楽では3分台の曲が中心になっているし、2分台なんてのも当たり前になっている。そう考えると、彼等って邦楽界では少数派である、ストリーミングで聞くことを意識して曲づくりができるアーティストなんだろうな。邦楽ではストリーミングで人気のあるアーティストでもダラダラと長い曲ばかりなのに…。単体で聞くと普通に思えた楽曲群がアルバムとして一気に聞けるっていうのは、そういうことなのかな。再評価だな。

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