自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

「天気の子」とアフター(ウィズ)コロナ

多くの人が指摘しているように、新型コロナウイルスが蔓延して以降の世の中って、「天気の子」の世界だよなと思う。

核戦争や環境破壊、ゾンビやエイリアンの襲来などにより変わってしまった世界を描いた映画やドラマ、アニメ、コミック、小説、演劇などは無数にある。でも、「天気の子」のように、それまでの日常生活が残った状態のまま、変わってしまった異常な世界で生きるという作品はあまりないんだよね。そして、そういう状況って、まさに今、世界中が経験していることなんだよね。

エンタメ的なものは、それまで通りにはいかないし、夏日でもマスクが必要にはなっているし、テレワークも増えたりはしているが、基本的な日常生活はそんなに変わってはいない。
それって、雨が延々と降り続くことによって、街は水没したりしているけれど、通勤や通学は普通に行われているという「天気の子」における描写そのものだしね。

コレまでの、こういった世の中が変わってしまった系の作品というのは、それまでの日常生活は残骸として残っているのみという扱いか、完全に文明社会から切り離されてしまうかって感じのものばかりだったからね…。

風の谷のナウシカ」では現代の文明社会からはかなり離れた生活をしている。「AKIRA」や「アイ・アム・レジェンド」などでは現代文明は廃墟と化している。「北斗の拳」や「マッドマックス」などでは荒廃した世界になっている。「幻魔大戦」では初めは日常生活が描かれているが、幻魔に襲われてからは世界は廃墟と化している。「新世紀エヴァンゲリオン」は日常生活のシーンはあるものの、キャラクターたちの生活する世界は現代の生活とはかなりかけ離れている部分が多い。

でも、「天気の子」は世界が変わっても、基本的な日常生活は変わっていないんだよね。要は、雨がやまない世界が日常の一部となってしまっただけ。これって、コロナ対策が日常になりつつある今の世界そのものだもんな…。

去年の夏に、このアニメ映画が公開された時には、「そんな突っ込みどころだらけの設定なんてありえないだろ!」と思ったが、まさか、そういう世界になってしまうとは…。

「事実は小説より奇なり」って、本当だなと実感する日々である…。

 

ところで最近、ネットで新海誠監督の前作「君の名は。」が男尊女卑的だと批判するフェミ論者の意見が話題になっているが、これって単にアニメを気持ち悪いと叩きたいだけの人のような気がするな…。
君の名は。」では確かに男子が女子を呼び捨てにし、女子は男子を君付けという呼び方だが、「天気の子」では、女子が男子を呼び捨てし、男子が女子をさん付けしているからね。それって、単にキャラクターの生活する環境などから設定しているだけでは?「君の名は。」のヒロインは地方在住者なのに対して、「天気の子」のヒロインは都内で生活する者だからね。つまり、男を呼び捨てできない雰囲気がある地方の男尊女卑的な環境を描いているだけだと思うんだけれどな…。それを、アニメ業界やアニオタ、新海が男尊女卑という話で展開するのはどうかと思うな。

 

それよりかは、「ドラえもん」の人種差別の方が問題だろ!しずかは、あのジャイアンですら「さん付け」で呼ぶのに、劇場版に出てくる外国人キャラは呼び捨てだからね。

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