自腹批評

テレビ番組制作者が自腹で鑑賞したエンタメ作品を批評

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」を見た。これで第92回アカデミー賞の作品賞候補を全部見ることができた。本当だったら、この作品は3月公開予定だったので、3月中という非常に早い時期に候補作品をコンプリートできるはずだったのに、新型コロナウイルスの影響で公開が延期されてしまったので6月という決して早くはない時期のコンプとなってしまった。

これにより、日本劇場未公開作品を除くと、第75回より18年連続で作品賞候補は全て劇場公開時に劇場もしくは試写会(およびそれに準ずる鑑賞方法)で見たことになった。

 

とりあえず、作品賞候補になった9本の中では申し訳ないが最下位だと思う。グレタ・ガーウィグ監督が監督賞にノミネートされないのは女性差別だみたいな意見を言っている人たちがリベラル思想・左翼思想・フェミ思想の人に多いが、他の8本に比べたら弱いと思うな。

個人的には9本の中では僅差で「ジョーカー」がトップ。次が作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」かな。

 

クラシックな描写と現代的な演出。インディーズな作風とメジャー作品の風格。文芸映画と娯楽映画。そういう一見相反する要素がうまく同居していると思う。

 

また、女性差別や黒人差別、格差社会などの描写も作品の時代背景を捏造せずに、なおかつ、今のポリコレ至上主義の米エンタメ界にも受け入れられるようになっているのは評価できると思う。

 

でも、時系列が行ったり来たりする構成は、つまらないシーンがあったりする時に一瞬、考えごとをしたりすることがあると思うが、そういう瞬間になんだか分からなくなってしまうと思うんだよね。「原作とか過去の映像作品、舞台などで多くの人がストーリーを知っているからいじってもいいでしょ?」って発想なのかもしれないが、この映画で初めて「若草物語」の存在を知る人だっているわけだしね…。

まぁ、メタ構造は良かったとは思うけれどね。

 

結局、この映画が評価されている理由の一つって、クリエイティブな仕事を目指す4姉妹が夢を諦めて平凡な幸せを手にするか、それとも…って話だからなんだろうね。だから、同業者やマスコミ関係者に評価されるのかな。自分もそうだが、平凡な幸せを諦めた人が多いしね…。要は「ラ・ラ・ランド」と同じ評価のされ方ってことかな。

 

それにしても、クソみたいな邦題だな…。ワン・ダイレクションのヒット曲みたいなサブタイトルはいらないよ!

ちなみに1Dの方の表記は「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」。普通はマイとライフの間に「・」をつけるのに、この映画の邦題はつけていないのが意味不明。しかも、ストーリーとオブの間、オブとマイライフの間にはついているんだから、尚更、意味不明。きちんと考えようよ!統一しようよ!

とはいえ、映画好きでも文学好きでもない人にアピールしようとして、こんなクソ邦題にした結果、いくら、非常事態宣言が解除されて間もない新作不足の時期とはいえ、好成績を上げたんだから、クソ邦題って効果はあるのかもね…。

映画マニアや読書家からすれば、「ふざけんな!」としか思えない邦題なんだけれどね…。映画や文学をあまり深追いしていないライト層がこの邦題で興味を持ったってことだからな…。我々は腹を立てているが、集客効果があるから、こういうクソ邦題はなくならないんだろうな…。

個人的には、原作の邦題そのままの「若草物語」。あるいは、これ自体が原題とは異なる邦題だとか、センスが古いというのであれば、原題カタカナ表記の「リトル・ウィメン」。もしくは、あまりサブタイトルを付けた邦題は好きではないが併記した「リトル・ウィメン/若草物語」でいいとは思うんだけれどね…。

 

≪追記≫

「ミッドサマー」のメンヘラ姉ちゃんことフローレンス・ピュー(三女役)が可愛い映画だった。あと、ティモシー・シャラメは年上の男から見てもイケメンだな…。

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